スタッフブログ

staff blog

日本の住宅にも「ダクト内清掃」の時代が来る? ― 全館空調の快適さと、見えない空気の通り道 ―

アメリカの家と日本の家を比べたとき、大きな違いの一つに空調方式があります。

日本では、部屋ごとに壁掛けエアコンを設置する方法が一般的です。一方、アメリカでは、家全体を冷暖房するセントラル空調が広く使われています。米国エネルギー情報局の2020年調査でも、約3分の2の世帯が、主な冷房設備としてセントラルエアコンまたはセントラルヒートポンプを使用しています。

ダクト式のセントラル空調は、機械で冷やしたり暖めたりした空気を、ダクトを通して各部屋へ届けます。家全体の温度を整えやすい一方で、気になるのが、その空気が通るダクトの中を、長年にわたって清潔に保てるのかという点です。

内部に汚れが蓄積し、さらに水分が加わってカビが発生した場合、空気とともに室内へ運ばれる可能性があります。給気用ダクトは毎日、家族が吸い込む空気の通り道ですから、衛生面への懸念は軽く扱えません。

日本でダクト式の空調を検討するときにも、こうした「見えない場所の汚れ」や「掃除の難しさ」は、採用をためらう理由になり得ます。ただし、日本でセントラル空調が主流にならなかった理由を、ダクトの汚れだけで説明することはできません。

私が大切だと思うのは、ダクトを使う設備を導入するなら、必要になったときに点検・清掃を頼める体制まで、一緒に考えておくことです。

ところが、そこで課題になるのが、対応できる業者の探しやすさと、清掃費用です。

ダクト清掃は、日本でもすでに始まっている

日本でも、ビルなどのダクト清掃には長い歴史があり、住宅向けのサービスも存在しています。これから新しく生まれる仕事、というわけではありません。

ただ、住宅に設置された全館空調のダクト内部まで、どの清掃業者でも対応できるとは限りません。

エアコン本体を洗浄する作業と、天井裏や床下に延びるダクトの内部を清掃する作業では、必要な機材も確認すべき構造も違います。ダクトの材質、曲がり方、分岐、点検口の位置などに応じて、作業方法を選ぶ必要があります。

全国の対応業者数を示す統計は今回確認できませんでしたが、設備を選ぶ側としては、「業者はどこかにあるだろう」で済ませたくありません。

自宅の地域まで来てもらえるか。そのメーカーや機種に対応できるか。ダクト内部まで作業してもらえるか。
導入前に、具体的な依頼先を確認しておくことが必要だと思います。

清掃費用も、設備選びの一部になる

もう一つの課題が費用です。

公開されている専門業者の料金には、全館空調のダクト清掃について、機種別に25万円から、35万円からといった掲載例があります。これは一社の料金例であり、全国共通の相場ではありませんが、まとまった支出になるケースがあることは分かります。

また、機種や設置状況によって作業範囲が変わるため、全館空調の点検・清掃を個別見積もりとしている業者もあります。

見積もりでは、ダクト内部だけなのか、本体やファン、熱交換器まで含むのかも確認したいところです。点検口の新設や部材の交換が必要なら、その費用も変わります。

空調設備を選ぶときは、導入費用と電気代に目が向きます。しかし、長く住む家では、清掃や修理、交換にかかる費用まで含めて考える必要があります。

「汚れたら掃除すればよい」という説明も、依頼先と費用が分からなければ、住む方にとって十分な安心にはつながりません。

必要なのは、一律の定期清掃より、状態に応じた対応

ここで、整理しておきたいことがあります。

ダクトを使っているからといって、すべての住宅で、一定年数ごとの内部清掃が必須になるわけではありません。

米国環境保護庁(EPA)も、一律の定期的なダクト清掃は推奨していません。目立つカビ、害虫などの侵入、大量のホコリによる詰まり、吹出口からの粒子の放出などがある場合に、清掃を検討するという考え方です。また、ダクト清掃による健康被害の予防効果は実証されていないとしています。

つまり、必要なのは「何年たったら必ず掃除する」という一律のルールではなく、メーカーの維持管理方法を守り、状態を確認し、必要な対応を選べることです。

私がダクト清掃サービスを欠かせないと考えるのも、この意味です。清掃が必要になったときに、適切な方法で対応できる仕組みがあってこそ、安心して長く使えます。

給気ダクトと排気ダクトでは、考え方が違う

ダクトの話では、空気の流れる向きも重要です。

室内へ空気を届ける給気・送風側のダクトと、室内の空気を屋外へ捨てる排気側のダクトでは、汚れが室内に与える影響の経路が異なります。

なお、セントラル空調で各部屋へ送る空気は、外気だけとは限りません。室内から戻ってきた空気を冷暖房して、再び送り出す仕組みもあります。換気のための給気と、冷暖房のための送風は、区別して考える必要があります。

通常運転中、屋外へ向かって空気が流れる排気ダクトの汚れを見て、「この汚れが全部、室内へ吹き出している」と判断するのは適切ではありません。一方、室内へ送る側の経路に問題があれば、その原因や汚れの状態を確認することが大切です。

ダクトがあるかどうかだけでなく、どの空気が、どこを通って、どこへ向かうのか。
設備の衛生面は、その仕組みから考えたいところです。

ちなみに、サンキハウスが採用している第一種熱交換換気システム「澄家」はこの給気用のダクトがほぼゼロ(給気側はダクトレス、排気側はダクトあり)のシステムなので、ダクト内清掃がいりません。

清掃しやすさは、設計の段階で決まる

ダクト内の汚れが気になっても、点検できず、道具も届かず、交換も難しい。そうなれば、対応は大がかりになります。

だからこそ、家づくりの段階で確認しておきたいことがあります。

  • フィルターを無理なく取り外し、手入れできるか
  • 本体やダクトの状態を確認できるか
  • 必要な場所に点検口があるか
  • 清掃や交換が必要になったとき、作業できるか
  • 対応業者と、おおよその費用を確認できるか

また、カビや水分の問題がある場合は、汚れを落とすだけでは十分ではありません。結露や水の侵入など、原因を改善しなければ再発する可能性があります。

汚れにくくする工夫と、問題が起きたときに対処できる設計。その両方が必要です。

快適さを、長く保てる設備にするために

家全体の温度を整える空調には、大きな魅力があります。その快適さを長く保つためには、機械本体だけでなく、空気の通り道まで含めて維持管理を考えなければなりません。

今後、日本でダクト式の全館空調がさらに使われるようになれば、住宅向けの点検・清掃サービスの役割も大きくなると私は考えています。地域で頼める業者が増え、作業内容や料金が分かりやすくなることも期待したいところです。

サンキハウスとしても、設備を選ぶ際には、完成したときの快適さとともに、住み始めてからのお手入れの負担を大切に考えたいと思っています。

どこを空気が通り、誰が点検し、必要なときにどう清掃するのか。

そこまで説明できることが、長く安心して使える空調設備の条件ではないでしょうか。

投稿者プロフィール

伊豆川達也
伊豆川達也宅地建物取引士