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日本の夏に合う換気の「全熱式」とは

パッシブハウスは、ドイツで生まれた高性能住宅の考え方です。
少ないエネルギーで快適に暮らすために、断熱・気密・日射取得・日射遮蔽・熱交換換気などを総合的に考える、とても合理的な設計手法です。

しかし、ここで大切なのは、ドイツで生まれた考え方を、そのまま日本の気候に当てはめればよいわけではない、ということです。

特に注意したいのが、夏の湿度です。

ドイツと日本では、夏の湿気が違う

ドイツをはじめとするヨーロッパの多くの地域では、夏に気温が高くなる日があっても、日本のように長期間にわたって高温多湿が続くわけではありません。

そのため、換気設備も、排気の「熱」を給気に戻す顕熱型の熱交換換気が多く使われてきました。

顕熱型換気は、温度だけの交換を行う仕組みです。
冬であれば、室内の暖かい空気の熱を外から入る冷たい空気に移すことで、暖房負荷を減らすことができます。

これは、暖房を重視する地域では非常に理にかなった考え方です。

しかし、日本の夏、とくに静岡のような高温多湿な地域では、温度だけでなく「水蒸気」をどう扱うかが大きな問題になります。

日本の夏は、換気で湿気が入ってくる

夏の外気は、気温が高いだけでなく、多くの水蒸気を含んでいます。

この空気を換気によってそのまま室内に入れると、エアコンは温度を下げるだけでなく、空気中の湿気を水に変えて外へ排出しなければなりません。

つまり、日本の夏の冷房では、顕熱負荷だけでなく、潜熱負荷、つまり湿気を処理する負荷が大きくなります。

顕熱型の換気では、温度はある程度交換できても、水蒸気は基本的にそのまま室内へ入ってきます。
そのため、せっかく高気密高断熱にして冷房効率を高めても、換気によって湿気が入り続ければ、エアコンの除湿負荷は増えてしまいます。

全熱式換気は、湿気も交換する

そこで日本の高温多湿な気候で重要になるのが、全熱式の熱交換換気です。

全熱式換気は、温度だけでなく湿度も交換します。
夏であれば、室内から排気される冷たく乾いた空気を利用して、外から入る暑く湿った空気の熱と湿気をある程度減らすことができます。

もちろん、全熱式換気だけで湿度を完全に処理できるわけではありません。
最終的にはエアコンの冷房・除湿が必要です。

それでも、外気の湿気をそのまま入れる顕熱型に比べれば、全熱式は冷房時の除湿負荷を減らす方向に働きます。

静岡の夏を考えると、この差はとても大きいと思います。

PHIの基準を守ることと、顕熱型にこだわることは違う

ドイツのパッシブハウス研究所(PHI)が求めているのは、建物全体として高い性能を実現することです。

断熱性能、気密性能、熱交換換気の効率、冷暖房負荷、一次エネルギー消費量などを総合的に見て、少ないエネルギーで快適な室内環境をつくることが目的です。

つまり、顕熱型の換気システムを使うこと自体が目的なのではありません。

大切なのは、PHIの性能基準を守りながら、その地域の気候に合った方法で快適性と省エネルギー性を実現することです。

ドイツでは顕熱型が合理的だったとしても、日本の蒸し暑い夏では、湿気まで含めて考える必要があります。

静岡では、夏の湿度管理が欠かせない

静岡の夏は、外気温だけでなく湿度も高い地域です。

窓を開ければ涼しくなる、換気すれば空気がきれいになる、という単純な話ではありません。
夏に外気を入れるということは、同時に湿気を入れるということでもあります。

だからこそ、高気密にして余計な外気の侵入を抑え、必要な換気は計画換気で行い、できるだけ湿気をそのまま室内に入れないことが重要になります。

その意味で、静岡のような地域では、全熱式の第一種換気はとても相性のよい選択肢です。

ドイツ型を否定するのではなく、日本型に調整する

これは、ドイツ型のパッシブハウスを否定する話ではありません。

むしろ、パッシブハウスの本質は、地域の気候を読み、建物の性能を科学的に設計することにあります。

であれば、日本の高温多湿な気候では、日本の夏に合った換気方式を選ぶべきです。

ドイツで多く使われてきた顕熱型をそのまま採用するのではなく、PHIの性能基準を守りながら、静岡の夏に必要な湿度管理まで含めて考える。

それが、これからの日本の高性能住宅に必要な視点だと思います。

まとめ

パッシブハウスは、ドイツで生まれた優れた設計手法です。

しかし、日本、とくに静岡のような高温多湿な地域では、冬の暖房負荷だけでなく、夏の冷房負荷と除湿負荷を同時に考える必要があります。

顕熱型換気は温度を交換する仕組みですが、日本の夏に問題となる水蒸気までは十分に処理できません。

一方、全熱式換気は、温度だけでなく湿度も交換するため、夏の外気から入る湿気を抑える効果が期待できます。

大切なのは、ドイツ型をそのまま真似ることではありません。
PHIの性能基準を尊重しながら、日本の気候、静岡の夏に合った換気方式を選ぶことです。

高気密・高断熱・計画換気・冷房除湿。
そして、湿度まで考えた全熱式換気システム。

それが、静岡で本当に快適な高性能住宅をつくるための、現実的な選択だと考えています。

投稿者プロフィール

伊豆川達也
伊豆川達也宅地建物取引士