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ツーバイフォー工法の進化は止まらない。――「Monopoly Framing」が示す、これからの木造住宅
ツーバイフォー工法が日本で本格的に使われるようになってから、すでに50年以上が経ちました。
日本では1974年に「枠組壁工法」という名で建築基準法上オープン化され、一般の住宅にも広く採用できる工法となりました。
それから半世紀。
この50年間で、日本の木造住宅は大きく変わりました。
そして興味深いことに、現在の高耐震な木造軸組工法、いわゆる「在来工法」を見てみると、50年前と比べてずいぶんツーバイフォーに近い建物になっています。
在来工法がツーバイフォーに近づいた50年
もともとの在来工法は、柱と梁を組み、筋かいによって地震や風に抵抗する「軸」を中心とした構造でした。
しかし日本はこの50年間、阪神・淡路大震災、熊本地震、能登半島地震など、幾度となく大きな地震を経験してきました。
1981年には新耐震基準が導入され、阪神・淡路大震災後の2000年には、木造住宅について基礎、柱頭・柱脚の接合部、耐力壁の配置バランスなどの規定が明確化されました。
そして現在の高耐震住宅を見ると、
柱と梁だけではなく外周に構造用面材を張る。
2階床には厚物構造用合板を張り、水平構面を固める。
※水平構面という考え方は、在来工法にはありませんでした。
柱、梁、床、壁を金物によって強固につなぐ。
各階の床を強い水平面として、その上に次の階を組み上げる。
という住宅が珍しくなくなりました。
これは見方を変えれば、ツーバイフォーが昔から得意としてきた、
「壁・床・屋根という面を組み合わせ、箱として地震に抵抗する」
という「六面体」的な考え方へ、在来工法が近づいてきたとも言えます。
もちろん在来工法とツーバイフォーは今でも異なる工法です。
しかし、耐震性を突き詰めていった結果、両者の考え方には以前よりずっと共通点が増えてきました。
では、ツーバイフォーは50年間変わらなかったのか
ここで一つ疑問が生まれます。
在来工法がこれだけ進化してきたのなら、
ツーバイフォー工法は、この50年間何をしていたのでしょうか。
日本ではツーバイフォーというと、
「2×4材で枠をつくる」
「構造用合板を釘で打つ」
「プラットフォーム工法で各階をつくる」
という、1970年代に日本へ入ってきた姿のまま説明されることがあります。
しかし当然ながら、本国アメリカの木造住宅も50年間立ち止まっていたわけではありません。
構造だけではなく、
防水、気密、断熱、熱橋、結露、耐久性
といった「建物外皮」の考え方が大きく進歩しています。
その一つの象徴がZIP Systemです。

ZIP Systemは構造用面材の表面に防水・透湿層を一体化し、パネルの継ぎ目を専用テープで処理することで、構造用面材を防水層・気密層として利用するシステムです。メーカーも「構造用面材と空気・水の制御層を一体化したシステム」と説明しています。
つまり、
構造体をつくってから、その外側に防水紙を張る
という従来の考え方から、
構造面材そのものを建物外皮の重要なコントロールレイヤーにする
という発想へ進んでいるのです。
その背景にある「Perfect Wall」という考え方
こうした進化を理解するうえで欠かせないのが、ジョー・リスティブレック博士が提唱してきた「Perfect Wall」という考え方です。
建物が長持ちするためには、
- 雨水
- 空気
- 水蒸気
- 熱
を制御しなければなりません。
Perfect Wallでは、それぞれを制御する層をできるだけ構造体の外側に連続して配置することを理想とします。
なぜ外側なのでしょう。
理由は単純です。
木造の構造体そのものを、水や外気、激しい温度変化から守るためです。
構造体の外側に防水層、気密層、断熱層を配置すれば、柱や梁は外部環境の影響を受けにくくなります。
言ってみれば、
木造躯体を建物の中へ入れてしまう
という発想です。
非常に合理的です。
そして、このPerfect Wallの思想をツーバイフォー住宅の「壁だけ」で終わらせず、屋根までつなげようとした考え方の一つが、今回紹介したい
「Monopoly Framing」(モノポリー・フレーミング)
です。
Monopoly Framingとは何か
Monopoly Framingは、アメリカの建築系YouTubeチャンネル「The Build Show」でMatt Risinger氏らが紹介しているフレーミング手法です。
新しい構造方式というより、ツーバイフォーの壁から屋根まで、防水・気密・断熱の層を連続させるための納まりと考えると分かりやすいでしょう。

通常は垂木を外壁より外へ伸ばして軒をつくりますが、Monopoly Framingではまず壁の位置で建物本体を完結させ、壁面材と屋根面材を直接つなぎます。
先に「軒のない箱」をつくり、その外側に軒を後付けするのです。
その姿がボードゲーム「Monopoly」の家の駒に似ていることから、この名前で呼ばれています。
なぜ軒を後からつくるのか
最大の目的は、壁と屋根の気密・防水ラインを途切れさせないためです。
通常の屋根では、壁と屋根の接合部を何本もの垂木が貫通するため、その周囲を一つずつ気密処理しなければなりません。
Monopoly Framingでは垂木を外へ跳ね出さず、壁面材と屋根面材を連続させてから軒を取り付けます。
つまり軒を、建物本体ではなく、建物外皮の外側に付加する部材として考えるわけです。
日本の「軒ゼロ」と同じではない
Monopoly Framingは、軒のない家をつくる工法ではありません。
重要なのは軒の有無ではなく、軒をつくるために防水・気密ラインを複雑にしないことです。
まず、
水を止める箱
空気を止める箱
熱を止める箱
をつくり、その外側に屋根材、外壁材、軒、庇などを取り付けていきます。
屋根まで「Perfect Wall」にする
Perfect Wallの基本は、防水・気密・断熱といったコントロールレイヤーを連続させることです。
Monopoly Framingでは、その考え方を壁だけでなく屋根まで広げ、基礎から外壁、屋根までを一本の連続した外皮として考えます。
さらにその外側を連続断熱で覆えば、柱や梁、垂木などによる熱橋も減らせます。
従来の「壁の中に断熱材を詰める」という発想から、
「木造の構造体そのものを、外側から丸ごと包む」
という考え方へ進化した工法と言えるでしょう。
これは日本のツーバイフォーと相性がいい
Monopoly Framingは、日本のツーバイフォーとも非常に相性がよい考え方です。
ツーバイフォーはもともと、壁・床・屋根を構造用面材で固める「面でつくる工法」です。
ならば、その面を構造だけでなく、防水・気密という建物外皮の基準面として利用するのは、とても自然な進化です。
ZIP Systemをそのまま使う必要もありません。日本の構造用合板や耐力面材に、適切な防水・気密材料を組み合わせれば、
壁から屋根まで途切れないコントロールレイヤー
をつくることは可能です。
大切なのは製品を輸入することではなく、考え方を取り入れることです。
日本仕様にするなら、さらに考えなければならない
もちろん、アメリカの納まりをそのまま日本へ持ち込めばよいわけではありません。
日本には梅雨、台風、高温多湿な夏があり、地域によっては積雪もあります。
特に後付けする軒は、台風時の吹上げ荷重を十分に検討する必要があります。また屋根も、
防水・気密層+断熱層+通気層+屋根仕上げ
という、日本の気候に適した構成や夏型結露への配慮が必要です。
求められるのは、Monopoly Framingのコピーではなく、
日本版Monopoly Framing
です。
在来工法だけが進化したわけではない
この50年間、日本の在来工法は大地震を経験するたびに改良されてきました。
構造用面材を張り、床を固め、接合部を金物で緊結し、耐震等級3を目指す。現在の在来工法は、50年前とは大きく変わっています。
しかし、それはツーバイフォーも同じです。
ツーバイフォーも50年前のままではありません。
北米では耐震性だけでなく、防水・気密・断熱・結露・熱橋・耐久性を含めて建物を考えるBuilding Scienceが発展し、ZIP Systemや外断熱、木質トラス、Monopoly Framingといった新しい技術が生まれています。
ツーバイフォーの次の50年へ
1974年、日本は北米からツーバイフォー工法を学びました。
壁・床・屋根を「面」として考え、各階をプラットフォームとして積み重ね、建物を六面体の箱としてつくる。
その考え方は、この50年で日本の木造住宅にも大きな影響を与えてきました。
ならば、そこで時計を止める必要はありません。
Monopoly Framingの本質は、単に「軒を後から付ける」ことではありません。
構造体の外側に防水・気密・断熱のラインをつくり、それを基礎から壁、屋根まで途切れさせない。
これは、「面で建物をつくる」というツーバイフォー本来の思想を、構造から建物外皮へと発展させたものとも言えるでしょう。
50年前に北米からツーバイフォーを学んだように、今もう一度、その進化から学ぶ時期が来ているのかもしれません。
ツーバイフォーは、50年前に完成した工法ではない。
まだ進化の途中です。
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