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間違いだらけのエアコン選び - 家の性能から導き出す方法

家づくりの中で、意外と難しいのがエアコン選びです。

家電量販店やカタログでは、エアコンは「6畳用」「10畳用」「14畳用」といった畳数表示で選ぶことが多いと思います。

しかし、この畳数表示は、必ずしも今の高性能住宅に合っているとは限りません。

特に、断熱性能・気密性能が高い住宅では、一般的な畳数表示どおりにエアコンを選ぶと、能力が大きすぎることがあります。

エアコンは大きければ安心、というものではありません。

能力が大きすぎると、すぐに設定温度に達して運転が止まり、また温度が変わると動き出すという断続運転になりやすくなります。

暖房ではまだ影響が小さいですが、冷房ではこれが問題になります。

温度は下がっているのに湿度が取れず、なんとなくジメジメする。
冷えすぎる場所と暑い場所ができる。
エアコンが止まったり動いたりして、快適さが安定しない。

こうしたことが起こりやすくなります。

これからのエアコン選びで大切なのは、畳数ではなく、その家に必要な冷暖房能力を、家の性能から考えることです。

エアコン選びは「家の熱の出入り」から考える

エアコンに必要な能力を考えるには、まずその家からどれだけ熱が逃げるのか、またはどれだけ熱が入ってくるのかを考える必要があります。

暖房の場合は、室内の熱が外へ逃げていきます。
その逃げていく熱を補うのが、暖房の役割です。

冷房の場合は、外から入ってくる熱、窓から入る日射、室内で発生する熱、そして湿気を処理する必要があります。

つまり、エアコン選びは単に「部屋の広さ」だけで決めるものではありません。

本来は、

  • 建物の断熱性能
  • 気密性能
  • 換気方式
  • 窓からの日射
  • 空気の流れ
  • 冷房時の除湿

まで含めて考える必要があります。

UA値から「外皮を通して逃げる熱」を考える

UA値を使うと、外皮から逃げる熱量を概算できます。
UA値とは、外皮平均熱貫流率のことです。

屋根、外壁、床、窓など、建物の外側に接する部分から、どれだけ熱が逃げやすいかを表す数値です。

考え方は、次のようになります。

外皮から逃げる熱 = UA値 × 外皮面積 × 室内外の温度差

ここでいう外皮面積とは、屋根・外壁・床・窓など、外気に接する部分の面積です。

たとえば、UA値が0.36W/㎡Kの住宅があるとします。
外皮面積が300㎡、外の気温が0℃、室温を20℃まで暖房したいとすると、

0.36 × 300 × 20 = 2,160W

つまり、外皮を通して約2.16kWの熱が逃げる、という考え方になります。

暖房時には、この逃げていく熱をエアコンなどで補う必要があります。

もちろん、これは外皮だけの計算です。
実際には、ここに換気による熱損失や、内部発熱、日射取得などが加わります。

それでも、UA値から考えることで、少なくとも「その家の断熱性能に対して、どれくらいの熱が出入りするのか」を把握しやすくなります。

高性能住宅では、換気による熱損失の影響が大きくなる

断熱性能が上がると、外壁や窓から逃げる熱は少なくなります。

すると、相対的に大きくなるのが、換気による熱損失です。

どれだけ断熱性能を高めても、住宅には換気が必要です。
換気をすれば、冬は暖かい室内の空気を外へ出し、冷たい外気を入れることになります。
夏はその逆で、暑く湿った外気が室内に入ってきます。

この換気による熱の出入りは、高性能住宅ほど無視できなくなります。

そのため、第三種換気よりも、第一種熱交換換気を採用した方が、トータルでの冷暖房エネルギーを抑えやすくなります。

第一種熱交換換気では、排気する空気の熱を利用して、入ってくる外気をあらかじめ暖めたり冷やしたりできます。

冬であれば、外から入る冷たい空気を、室内から出る暖かい空気の熱で少し暖める。
夏であれば、外から入る暑い空気を、室内から出る涼しい空気で少し冷やす。

これにより、エアコンが負担する熱量を減らすことができます。

高断熱・高気密住宅では、換気計画と空調計画は切り離して考えることができません。

暖房と冷房では、必要な考え方が違う

同じエアコンでも、暖房と冷房では計算の考え方が少し違います。

暖房の場合、建物の中で発生する熱は、基本的にすべてプラスに働きます。

たとえば、

  • 照明の熱
  • 調理の熱
  • 給湯や家電から出る熱
  • 人の体温
  • 呼吸や生活による発熱

これらは、冬には室内を暖める方向に働きます。

つまり、暖房時にはエアコンだけでなく、暮らしの中で発生する熱も、室温を保つ助けになります。

一方、冷房の場合は逆です。

照明、調理、家電、人の体温。
これらはすべて、室内を暑くする方向に働きます。

暖房では味方だった内部発熱が、冷房では負荷になります。

ここが冷房計画を難しくしているポイントです。

さらに日本の夏は、温度だけでなく湿度も高いです。
冷房では、温度を下げるだけでなく、湿気を取ることも重要になります。

そのため、冷房のエアコン選びでは、単純な冷房能力だけでなく、除湿能力や低負荷運転の安定性も見る必要があります。

エアコンのカタログで見るべき数字

エアコンのカタログを見ると、能力の欄に「2.2kW」などと書かれています。③

一般的に6畳用と呼ばれるエアコンは、冷房定格能力が2.2kWです。

ただし、インバーター制御のエアコンは、常に2.2kWで運転しているわけではありません。

能力には範囲があります。たとえば、上の6畳用エアコンでは、

冷房能力:0.4〜3.4kW ③
暖房能力:0.3〜5.7kW ③
暖房低温能力:4.5kW ⑥

というように表示されています。

ここで大切なのは、定格の2.2kWだけを見るのではなく、能力の範囲を見ることです。

高性能住宅では、エアコンが常に最大能力で運転することはあまりありません。
むしろ、少ない出力で長く安定して動くことが重要になります。

そのため、見るべきポイントは、

最小能力がどこまで小さいか
必要な時にどこまで能力を出せるか
外気温が低い時の暖房能力が足りるか

です。

特に暖房では、外気温が低くなるほどエアコンの能力は落ちやすくなります。
そこで重要になるのが、暖房低温能力 です。

暖房低温能力は、外気温2℃時など、寒い条件でどれだけ暖房能力を出せるかを示す数字です。

温暖地であっても、冬の朝方には外気温が下がります。
床下エアコンのように、1台で広い範囲を暖房する計画では、この低温時の能力を確認することが大切です。

「何畳用」ではなく「どの範囲を担当するか」で考える

これからのエアコン選びでは、エアコンを「何畳用」として見るのではなく、そのエアコンが家のどの範囲を担当するのかで考える必要があります。

たとえば、床下エアコンで1階全体それとも家中の暖房を担当するのか。
小屋裏エアコンで2階と吹抜けを通じて冷房を担当するのか。
LDKだけを担当するのか。
個室も含めて空気を回す計画なのか。

この範囲が決まれば、その部分の気積や床面積、断熱性能、換気量、温度差から、必要な熱量を考えることができます。

たとえば、あるエアコンが担当する範囲の熱損失が、冬の設計条件で3.0kW程度だとします。

この場合、定格能力だけでなく、外気温が低い時に3.0kW以上の暖房能力を安定して出せるかを見る必要があります。

同時に、高性能住宅では常時3.0kWが必要なわけではありません。
多くの時間は、それより小さい負荷で運転します。

そのため、最小能力が小さく、弱い運転を続けやすい機種の方が、快適性が安定しやすくなります。

大きすぎるエアコンは、冷房時に不利になることがある

「小さいと効かなかったら困るから、大きめを選んでおこう」

この考え方は、昔の断熱性能が低い家では自然だったかもしれません。

しかし、高性能住宅では注意が必要です。

大きすぎるエアコンは、冷房時にすぐ室温を下げてしまいます。
すると、エアコンが早く止まります。

エアコンが止まると、除湿も止まります。

その結果、温度は下がっているのに湿度が残り、体感としては不快になることがあります。

日本の夏は、温度だけでなく湿度が大きな問題です。
特に高断熱・高気密住宅では、冷房負荷が小さくなる一方で、生活による発湿や換気で入る湿気は残ります。

だからこそ、冷房時には、

大きな能力で一気に冷やすこと

よりも、

小さな能力で長く運転し、温度と湿度を安定させること

が重要になります。

高性能住宅のエアコン選びで見るべきポイント

高性能住宅でエアコンを選ぶ時には、次の点を確認する必要があります。

まず、家の断熱性能です。
UA値や、そこから考えられる外皮の熱損失を確認します。

次に、気密性能です。
C値が良いほど、すき間風による予測しにくい熱の出入りが少なくなります。
ただし、C値から単純に換気量を決められるわけではないため、計画換気と実際の施工精度を合わせて考える必要があります。

そして、換気方式です。
三種換気なのか、第一種熱交換換気なのか。
熱交換効率はどれくらいか。
夏に湿気をどれだけ持ち込むのか。
冬にどれだけ熱を逃がすのか。

さらに、窓の日射取得と日射遮蔽です。
冬の日射は暖房を助けます。
夏の日射は冷房負荷を増やします。

最後に、エアコンの能力範囲です。

定格能力だけでなく、最小能力、最大能力、暖房低温能力、除湿運転のしやすさを確認します。

まとめ

エアコン選びは、畳数だけで決めるものではありません。

特に高性能住宅では、家の断熱性能、気密性能、換気方式、日射条件、空気の流れを含めて考える必要があります。

暖房では、建物から逃げる熱をどれだけ補えばよいか。
冷房では、外から入る熱、日射、室内発熱、湿気をどれだけ処理すればよいか。

この考え方が大切です。

エアコンのカタログに書かれている「6畳用」「10畳用」という表示は、あくまで一般的な目安です。

これからの高性能住宅では、

何畳用かではなく、家の性能に合っているか。
大きな能力より、必要な能力を安定して出せるか。
最大能力だけでなく、最小能力と低温時能力を見ること。

ここが重要になります。

間違いだらけのエアコン選びから抜け出すためには、家電としてのエアコンを見るだけでは不十分です。

エアコンは、住宅の性能とセットで考える設備です。

家の性能から必要な熱量を導き出し、その家に合ったエアコンを選ぶ。

それが、高性能住宅にふさわしいエアコン選びです。

投稿者プロフィール

伊豆川達也
伊豆川達也宅地建物取引士