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世界に見る制震装置の動向とツーバイフォー工法における制震の考え方
近年、日本では「制震住宅」という言葉が広く知られるようになりました。
耐震等級3に加えて制震装置を取り付けることで、「繰り返し地震に強い家」「揺れを小さくする家」を目指す考え方です。
しかし、制震装置の働き方は構造によって異なります。
以前の記事では、在来軸組工法とツーバイフォー工法では制震装置の意味が違うことを説明しました。
在来軸組工法では柱と梁の変形を利用して油圧ダンパーが大きく働きますが、ツーバイフォー工法はもともと変形が小さいため、同じ考え方がそのまま当てはまるわけではありません。
実は海外では、ツーバイフォーやCLTなどの面構造に対して、日本とは異なる制震技術が発展しています。

ツーバイフォー工法はそもそも「揺れにくい構造」
在来軸組工法では、柱と梁の接合部が回転することで建物全体が変形し、その変形を利用してダンパーがエネルギーを吸収します。設計時の層間変形角は
- 在来軸組工法:1/120~1/150rad程度
と比較的大きく、油圧ダンパーとの相性が良い構造です。
一方、ツーバイフォー工法は壁全体で力を受けるモノコック構造です。設計時の層間変形角は
- ツーバイフォー工法:1/300~1/600rad程度
と非常に小さく、剛性は在来工法の2~4倍とも言われています。
つまり、「ダンパーが動くほど建物が変形しない」ということです。
これは一見すると良いことですが、逆に言えば大きな変位を前提とした油圧ダンパーは十分に働きにくいということでもあります。
北米で主流になりつつある「摩擦ダンパー」
北米やカナダでは、ツーバイフォーなど剛性の高い木造住宅に対して、摩擦ダンパーが多く採用されています。
有名なのがカナダのPall Dynamics社の摩擦ダンパーです。
これは金属同士の摩擦力によって地震エネルギーを熱に変換する仕組みで、
- 小さな変位でも機能する
- 繰り返し地震に強い
- スリップ荷重を設計できる
という特徴があります。日本の住友理工TRCダンパーも、考え方としてはこれに近いものです。
ツーバイフォー工法では、油圧のような「大きく動いて吸収する」方式よりも、
「小さな変形でも働く」制震装置の方が合理的なのです。
ニュージーランドが進める「揺れ戻し構造」
さらに興味深いのが、ニュージーランドで研究が進んでいるPres-Lam構造です。
これはCLTパネルをポストテンションケーブルで基礎に引き付け、
地震時には建物全体がロッキング(揺れ戻し)する構造です。
エネルギー吸収は壁脚部に取り付けたU字型鋼板ダンパーが担います。
面内変形は小さいまま、建物全体が回転してエネルギーを逃がすという発想です。
これは「壁を変形させる」のではなく、「建物全体をしなやかに揺らす」という、
日本の制震思想とは異なるアプローチです。
粘弾性ダンパーも小変位向き
北米では高分子材料を用いた粘弾性ダンパーの研究も進んでいます。
ゴムのような材料が微小な変形でもエネルギーを吸収するため、ツーバイフォーの耐力壁やホールダウン金物付近に組み込む方法が検討されています。日本でいうオイレス工業のゴム系制震壁に近い考え方です。
さらに進む「建物全体で揺れを受ける」思想
カナダの建築家マイケル・グリーンが提唱するFFTT(Finding the Forest Through the Trees)工法では、CLTと鉄骨を組み合わせ、構造システム全体でエネルギーを吸収する考え方が採用されています。
また北米やニュージーランドでは、基礎免震(FPB:摩擦振り子支承)の研究も進んでいます。
これは建物そのものを滑らせることで地震エネルギーを吸収する方式で、上部構造の剛性に左右されないため、ツーバイフォーのモノコック構造とも非常に相性が良い技術です。

日本の制震市場との違い
日本では油圧ダンパーが制震装置の主流ですが、海外では
- 摩擦ダンパー
- 粘弾性ダンパー
- ロッキング壁
- 構造システム全体での制震
- 基礎免震
といった多様な技術が発展しています。
特にツーバイフォー工法のように変形の小さい構造では、「大きく動いて吸収する」のではなく、
「小さな変位でも働く」あるいは「建物全体で揺れを受け流す」方向へ進化していることが特徴です。
結論:ツーバイフォー工法では「制震装置」より「構造全体」で考える時代へ
在来軸組工法では、柱と梁の変形を利用する油圧ダンパーが非常に有効です。
しかし、モノコック構造であるツーバイフォー工法では、もともと層間変形角が小さいため(剛性が高く変形しないため)、制震装置の役割そのものが変わってきます。
海外を見ると、「制震装置を付ける」という発想から、「建物全体で地震エネルギーを処理する」という考え方へ進化しつつあります。
高い耐震性能を持つツーバイフォー工法だからこそ、今後は単に制震ダンパーを追加するだけではなく、構造全体のしなやかさやエネルギー吸収の仕組みを含めた総合的な耐震設計が重要になっていくのかもしれません。
そして、その方向性は、ツーバイフォー工法の次世代とも言われるCLT木造へと受け継がれていく可能性があります。
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