スタッフブログ
staff blog
長期優良住宅は中古住宅の価値を上げたのか?
「長期優良住宅なら、将来も価値が残る」
そう思って家づくりを検討されている方は多いのではないでしょうか。
確かに、この制度は「長く使える良い住宅を増やす」ことを目的に生まれました。
では実際に、中古住宅として売却する時、その価値はきちんと評価されているのでしょうか。
結論から言えば、
長期優良住宅は住宅の質を引き上げましたが、
中古住宅の価値そのものを押し上げたかというと、まだ十分とは言えない
これが現在の実態です。
長期優良住宅が生まれた背景
戦後の日本では、とにかく住宅を増やすことが優先されてきました。人口増加と経済成長の中で、短期間に大量の住宅が供給されていきます。その結果、「質より量」の住宅が増え、建て替えを前提とした住宅文化が定着しました。
実際、日本の住宅の平均的な利用期間は約30年といわれています。これは他の先進国と比べても極めて短い数字です。
こうした反省から、国は大きく方向転換を図ります。
「つくって壊す」から「長く使う」へ、
その象徴として2009年に長期優良住宅制度がスタートしました。
制度が実現したこと
まず、制度としての成果は確実にあります。
- 高断熱・高耐震の住宅が増えた
- 新築の約4割が長期優良住宅になった
- 税制優遇や金利優遇が整備された
つまり、
👉 「良い家をつくる環境」は確実に整った
と言えます。
しかし、価値を決める仕組みは変わっていない
ところが、住宅の価値を決める上で最も大きな影響を持つ「金融機関の評価」は、ほとんど変わっていません。
現在でも多くの銀行は、建物の価値を築年数で判断しています。木造住宅の場合、築20年前後で価値をゼロとみなす評価方法が一般的です。そしてこれは、長期優良住宅であっても例外ではありません。
つまり、どれだけ高性能で、どれだけ丁寧に維持されてきた住宅であっても、評価の仕組みが同じであれば、結果として同じように扱われてしまうのです。
ここに、日米の大きなギャップがあります。

この背景には、銀行の考え方があります。
銀行は住宅の価値そのものを見ているのではなく、「貸したお金が確実に回収できるか」を最優先に判断しています。
そのため、個々の住宅の性能や状態を細かく評価するよりも、築年数に基づいたシンプルな基準で判断する方が合理的なのです。結果として、長期優良住宅という制度があっても、その価値が担保評価に十分反映されない状況が続いています。
制度の限界と現在地
こうして見ていくと、長期優良住宅の役割は少し違った見え方をしてきます。
この制度は、「住宅の質を高める」ことには成功しています。
しかし、「中古住宅としての価値を市場で引き上げる」ところまでは、まだ届いていません。
言い換えると、
買う時の情報は多くなったが、売るときの評価までは変わっていない
という状態です。
それでも長期優良住宅に意味はあるのか
ここまで読むと、「長期優良住宅でも評価されないなら意味がないのでは」と感じるかもしれません。
しかし、結論は逆です。
長期優良住宅は、これからの住宅にとって重要な制度です。
ただし、その役割は少し捉え直す必要があります。
この制度は、価値を自動的に上げてくれるものではありません。
あくまで、価値をつくるための前提条件を整えるものです。
評価は待つものではなく、つくるもの
現在の日本では、どれだけ性能が高い住宅であっても、それだけで市場価値が上がることはほとんどありません。
だからこそ必要なのは、
「良い家をつくること」だけでなく、
「良い家だと証明すること」です。
実際の光熱費や室温、メンテナンスの履歴など、暮らしの中で積み重なるデータをきちんと残していく。そうした情報があって初めて、その住宅は第三者にも価値が伝わります。
評価は自然に上がるのを待つものではなく、
自らつくっていくものです。
長期優良住宅は、その証明をしやすくする土台になります。
だからこそ、この制度の上にどれだけ情報を積み重ねられるかが、将来の価値を左右します。
まとめ
長期優良住宅は、住宅の価値を直接押し上げる制度ではありません。
しかし、
価値をつくるスタートラインに立つための制度です。

では、その価値をどうやってつくるのか。
それは、住まいの「事実」を残していくことです。例えば、
- 室内の温度が一年を通してどのように保たれているのか
- 冷暖房にどれくらいのエネルギーを使っているのか
- 実際の光熱費はいくらなのか
- いつ、どこを点検し、どのようなメンテナンスを行ってきたのか
- どの部材を使い、どのように施工されているのか。
こうした情報を、数字や記録として積み重ねていくこと。
そしてそれを、次に住む人が理解できる形で残していくことです。
家は時間とともに劣化するものですが、
同時に「履歴」という価値も積み上がっていきます。
その履歴が見える住宅は、単なる中古住宅ではなく、
状態が分かる安心できる住宅として評価されます。
これからの家づくりは、
建てた瞬間の性能だけでなく、
その性能がどう維持されてきたかまで含めて伝えることが重要になります。
長期優良住宅は、そのための土台です。
その上に、どれだけの「事実」を積み重ねられるか。
それが、将来の価値を左右していきます。
最近の施工事例
イベント情報
投稿者プロフィール

- 宅地建物取引士
最新の投稿
つぶやき2026年4月26日長期優良住宅は中古住宅の価値を上げたのか?
お知らせ2026年4月17日【YouTube】家づくりを考え始めた方へおすすめ
ゼロエネ住宅2026年4月10日高性能住宅ほど注意したい ―梅雨時期の小屋裏結露の仕組み―
ゼロエネ住宅2026年4月2日「パーフェクト・ウォール」のすすめ








