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「倒壊しない家」をどう確かめる? ~許容応力度計算と wallstat の違いをわかりやすく解説~
「地震で倒壊しない家を建てたい」
これは、家づくりを考えるすべての人の共通の願いです。
しかし現実には、本当の耐震性能は大地震が起きてみないと分からない――。
その“見えない不安”を少しでも減らすために、国は耐震等級1〜3を定め、
その等級を満たすための計算方法として 許容応力度計算 が整備されています。
許容応力度計算とは?
一度の大きな地震力に「耐えられるか」を確認する計算
許容応力度計算は、
部材(柱・梁・筋かいなど)が 一度の大きな力(静的な地震力) に耐えられるかを判定します。
言いかえると、「部材一つひとつに過重がかかっても壊れないか」を点検する計算です。
- 柱が耐えられる最大の圧縮力
- 梁が耐えられる曲げ
- 筋かいにかかる引張・圧縮
これらが「許容範囲を超えていないか」をチェックするもので、
耐震等級3を取得する主要な方法のひとつです。
しかしここに、ひとつ重要な教訓があります。
地震は「一発の揺れ」ではない
連続的で複雑な“動的現象”
実際の地震は、
- 大きな揺れが何度も襲い、
- 小さな破壊が次の破壊を生み、
- 連鎖的に建物へダメージが蓄積する
という 動的(時間変化を伴う)現象 です。
ある部材が少し変形すると、
本来そこにかかるはずのない力が別の部材に流れ、
それが次の破壊を生む――。
倒壊は「ひとつの壊れ方」で起きるのではなく、
小さな変形の積み重ねが連鎖反応として広がる結果 なのです。
この “連鎖” を静的な計算だけで完全に再現するのは難しく、
そこで登場するのが wallstat(ウォールスタット) です。
wallstat とは?
建物が“時間とともにどう壊れるか”を追う倒壊シミュレーション
京都大学・生存圏研究所
中川貴文准教授が開発した木造住宅の倒壊解析シミュレーション が wallstat です。
特徴は次の通り:
- 地震波を入力して、
- 各部材の変形・破壊・応力を時刻ごとに計算し、
- 建物がどう揺れ、どこが変形し、どう倒壊するかを 動画として可視化 できる
壁の状態も色で表示され、
- 黄色:短期許容応力度(降伏点)に到達
- オレンジ:最大耐力に到達
- 赤:破壊(損傷)
というように、変形の進行が“見える”のが大きな特徴です。
黄色の段階なら修復可能で、
黄色で留まる建物=再現性のある高い耐震性 と言えます。
そこで登場するのが wallstat(ウォールスタット) です。
サンキハウスの取り組み
熊本地震(益城町・震度7)の地震波で検証しています
サンキハウスでは、
実際の熊本地震・益城町の震度7波形を使った wallstat倒壊シミュレーション を実施しています。
結果は非常に良好で、
黄色の表示(降伏点)すらほとんど出ない強固な構造 であることが確認できました。
ここでは、その解析結果の一例をご覧ください。【実際の住宅ご覧いただけます】
まとめ
- 許容応力度計算:
一度の大きな地震力に耐えられるかを判定する“静的な計算” - wallstat:
時間とともに変形が連鎖し、倒壊に至る過程を再現する“動的シミュレーション”
両方を組み合わせることで、
「倒壊しない家づくり」への信頼性をより高めることができます。
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