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十勝の大地が育てた、スケールの違う家づくり ―大規模農家の暮らしを支える十勝の2×4住宅―
日本とは思えない、十勝の住宅風景
北海道・帯広を中心とする十勝地方には、日本のほかの地域ではなかなか見られない住宅風景があります。
地平線まで続くような畑、その向こうに連なる日高山脈。広大な農地の中に、大きな屋根を持つ住宅や、個性的なデザインの邸宅が堂々と建っています。
敷地いっぱいに住宅を配置する静岡の家づくりとは、まるで別世界です。
建物の大きさも、屋根の形も、窓から見える景色も違います。そこには、北米の農村に建つ住宅を思わせるような、おおらかな雰囲気があります。
なぜ十勝では、こうした住宅が生まれるのでしょうか。
その背景には、雄大な自然だけでなく、日本屈指の規模を誇る農業と、この地域に根づいた独特の住宅文化があります。
日本の食料を支える、大規模農業の土地
十勝は、日本を代表する農業地帯です。
小麦、ジャガイモ、豆類、てん菜などの畑作に加え、酪農や畜産も盛んです。広大な農地では大型の農業機械が活躍し、家族経営であっても、その事業規模は一般的にイメージする農家とは大きく異なります。
国土交通省北海道開発局の資料によると、十勝の農場1戸当たりの平均経営面積は約48ヘクタール。全国平均の約12倍に達します。
東京ドーム約10個分という広さです。
これだけの土地を管理する農家は、単に農作物を育てる人というだけでなく、大きな設備投資を行い、経営を続けていく事業者でもあります。
もちろん、経営規模が大きいことと所得が高いことは同じではありません。農業には大きな経費や経営上のリスクもあります。
それでも、十勝には大規模な農業経営を背景に、住宅にも積極的な投資をする人たちがいます。
そして、農村部では住宅の敷地に都市部のような厳しい制約が少ないケースもあります。
広々とした平屋、大きな吹き抜け、二世帯がゆったり暮らす住宅。農業経営者が求める住宅には、一般的な都市型住宅とは違った可能性が広がっています。


十勝は2×4工法が根づいた地域
住宅のつくり方にも、十勝ならではの特徴があります。
それが、2×4(ツーバイフォー)工法の普及です。
日本の木造住宅は在来軸組工法が主流ですが、十勝では2×4工法が非常に身近な存在です。
地元住宅会社への取材記事では、十勝での2×4工法のシェアは6〜7割程度との話も紹介されています。
全国的に見ても、特徴的な地域といえるでしょう。
十勝で2×4工法が広がり始めたのは1970年代。寒さが厳しく、地震への備えも重要な北海道の暮らしに、壁と床を一体化した枠組壁工法の考え方が受け入れられてきました。
現在では2×6工法を採用し、厚い壁断熱と高い気密性能を目指す住宅会社もあります。
冬の厳しい寒さから家族を守りながら、大きな空間を快適に保つこと。
十勝では、住宅の断熱・気密性能は単なる付加価値ではなく、暮らしを支える重要な基本性能なのです。
農家の暮らしを知り尽くした住宅会社
そんな十勝で、興味深い家づくりをしているのが、住宅会社「カントリーヴィレッジ」です。
この会社の特徴は、農家住宅の建築実績が豊富であること。
農家といっても、畑作農家と酪農家では生活のリズムが違います。
畑作農家は、春の種まきや秋の収穫期に非常に忙しくなります。一方、酪農家には毎日の搾乳や家畜の世話があり、決まった休日を取ることが難しい場合もあります。
同社では、そうした農業の事情を理解し、農閑期や仕事の合間に打ち合わせを行ったり、農場まで出向いたりすることもあるそうです。
住宅の設計にも、その姿勢が表れています。
例えば、農作業を終えて帰宅したときの動線。
裏玄関から入り、作業着を脱ぎ、洗濯をして、そのまま浴室へ向かう。土埃や家畜のにおいを、家族がくつろぐリビングまで持ち込まない工夫です。
また、農協の担当者や農業機械メーカーなど、仕事の関係者が訪ねてくることもあるため、生活空間とは別に事務室や来客スペースを設けることもあります。
外壁の色についても、畑から舞い上がる土埃や虫などを考慮するそうです。
単に見た目の美しさを追求するのではなく、農業という仕事と住宅での暮らしを一体で考えているのです。
「誰が、どこで、どのように暮らすのか」
住宅設計の基本ともいえることですが、地域の産業や生活を深く理解しているからこそ生まれる提案なのだと思います。
90坪の農家住宅。大きな屋根の下で暮らす
カントリーヴィレッジが手がけた住宅の中でも、特に印象的なのが、更別村に建つ約90坪の二世帯住宅です。
農業を3代にわたって受け継ぐご家族のために建てられた住宅で、2×6工法が採用されています。
まず目を引くのが、大きく伸びる屋根と、その下に広がる堂々とした建物の姿です。

大きな屋根の形状を生かした勾配天井が、吹き抜けの上部まで広がり、高窓からは十勝の青空や周囲の農地を眺めることができます。
都市部の住宅では、隣家の窓や道路からの視線を考えながら開口部を設けることが多いものです。
しかし、周囲に広大な農地が広がる十勝では、その風景自体が住宅の魅力になります。
窓の向こうにあるのは、隣の住宅ではなく、自分たちが日々耕している大地です。
農業を営む家族にとって、こうした住まいは、仕事の場である農地と家族の生活が自然につながる場所なのかもしれません。
90坪という広さも驚きですが、それ以上に印象的なのは、その大きな住宅が十勝の風景の中では決して不自然に見えないことです。
広い大地が、大きな家を受け止めている。
そんな表現が似合う住宅です。
家の個性は、その土地の暮らしから生まれる
カントリーヴィレッジの施工事例には、大きな屋根を持つ二世帯住宅のほか、インダストリアルデザインの平屋や、三角屋根が印象的な住宅など、さまざまな建物が登場します。

デザインはそれぞれ異なりますが、共通しているのは、そこに住む人の仕事や暮らしを理解して設計されていることです。
十勝の住宅が魅力的に見えるのは、単に敷地が広いからでも、建物が大きいからでもないのでしょう。
その土地の風景、気候、産業、そして人々の暮らし方が、住宅の形に表れているからだと思います。
住宅は全国どこでも同じである必要はありません。
冬の厳しさが際立つ十勝と、夏の高温多湿に向き合う静岡では、求められる住宅の性能や設計も違ってきます。
一方で、断熱・気密性能を重視し、その土地の暮らしに合った住宅をつくるという基本的な考え方には、共通するものがあります。
よい住宅とは、流行のデザインを当てはめた家ではなく、その地域で暮らす人に合った家なのではないでしょうか。
十勝の雄大な大地に建つ個性的な住宅を見ていると、家づくりにはまだまだ多くの可能性があることを感じます。
地域の個性が、住宅の個性になる。
そんな家づくりの面白さを改めて教えてくれる、十勝の住宅会社です。
参考にさせて戴きました。ありがとうございます。
- カントリーヴィレッジ「十勝・帯広 農家住宅の家づくりポイント」
https://co-vill.net/archives/1522 - 北海道開発局「十勝農業の概要」
- 十勝ツーバイフォー協会
- 北海道の人、暮らし、仕事。「くらしごと」赤坂建設紹介記事
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