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着工数からみる日本の住宅のこれから
前回の記事では、アメリカと日本における中古住宅の価値の違いについて整理しました。
その背景にあるのは、制度の差だけでなく、住宅そのものに向けられるリスペクトの違いだと考えられます。
多くの専門家が関わり、時間と技術を積み重ねてつくられる「建築」という成果物を、
できるだけ長く残し、使い続けようとする姿勢に、両国の意識の差が表れているのかもしれません。
国土交通省の統計から2024年の住宅着工数を見てみると、興味深い事実が浮かび上がります。
日本の木造建築着工数は467,958戸。そのうち2×4工法は98,987戸と、木造全体の約21%を占めています。(5棟に1棟は2×4工法の住宅です)全住宅着工数816,388戸に対する木造比率は57.3%です。
一方、アメリカに目を向けると、全住宅着工数1,364,000戸のうち木造(プラットフォームコンストラクション、日本の2×4工法と同じ構造)が1,210,000戸に上り、木造比率はなんと88.7%に達します。(全て2×4工法と考えられます。)
またここで注目すべきは、人口あたりの着工数です。
人口100万人あたりの住宅着工数を比較すると、アメリカの約4,146戸に対し、日本は約6,434戸。人口比で考えると、日本はアメリカの約1.5倍ものペースで新築を建て続けていることになります。
新築至上主義の終焉と、35%の市場縮小・
この数字を冷静に分析すると、日本の住宅着工数は今後、現在の水準から約35%程度縮小すると推計されます。人口減少と空き家問題が深刻化する中で、これまでの「造っては壊す」モデルはもはや限界を迎えているのです。
今後の展望:中古住宅流通と「建物の価値」の再定義
では、これからの住宅建築業界はどう変わっていくのでしょうか。
結論として、新築着工数の減少を補う形で、中古住宅(ストック住宅)の流通が市場の主役に躍り出ると予想されます。
しかし、単に古い家が売れるようになるわけではありません。中古市場が活発化するなかで、買い手が求めるのは「安心」と「資産価値」です。今後、住宅建築業界に求められるのは、単なる施工能力ではなく、以下の要素を担保する仕組みです。
- 第三者による厳格な構造・性能の証明
- 詳細なメンテナンス履歴の蓄積
- 客観的な評価書の作成
これからの住宅業界は、「新築を売る」ビジネスから、「建物の価値を維持・証明し、循環させる」ビジネスへと大きく変わらざるを得ません。資産として価値が残り続ける建物だけが選ばれる、本質的な質が問われる時代の到来です。
「マイナスをプラスにする」性能向上リノベーション
これからの市場で選ばれるのは、単に内装を綺麗にしただけの「リフォーム」ではなく、建物の根本的なスペックを引き上げる「リノベーション」です。
- 耐震・構造の強化
屋根を軽量な素材(スレートや金属屋根)に葺き替えて建物全体の重心を下げたり、柱や梁の接合部を金物で補強したりすることで、現代の耐震基準に適合させます。 - 断熱・省エネ性能の向上
窓のサッシを高性能なものへ交換し、壁や天井に断熱材を追加することで、光熱費を抑えつつ快適な住環境を実現します。 - スマートホーム化
最新のHEMS(家庭用エネルギー管理システム)やスマートロック、IoT設備の導入は、特に若い世代の買い手にとって強力なアピールポイントとなります。
「家の履歴書」で価値を可視化する
中古住宅の最大の懸念は「見えない部分の不透明さ」です。これを解消するのが、住宅履歴管理システム(いえかるて等)の活用です。
- メンテナンス履歴の蓄積
いつ、どこを、誰が修繕したのかをクラウド上でデータ管理します。これにより、将来売却する際に「適切に維持管理されてきた証拠」として提示でき、査定額の向上に直結します。 - 既存住宅性能評価書の活用
有資格者によるインスペクション(建物状況調査)を実施し、その結果を「評価書」として残すことで、買い手は安心して購入を決断できます。
国が推進する「安心R住宅」制度
こうした取り組みを後押ししているのが、国土交通省の「安心R住宅」制度です。

「耐震性がある」「インスペクション済み」「リフォーム済み(または提案付き)」の3条件を満たす物件には、国が認めたロゴマークを付与でき、従来の「中古=汚い、不安」というイメージを払拭する強力な武器となります。
新築着工数が減るこれからの時代、工務店やリフォーム会社にとっての商機は、こうした「見えない価値」を可視化し、長く住み継げるストックを創り出す提案力にあると言えるでしょう。
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