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燃料高騰時代へ。これからの家づくりは「除湿」と「空調計画」で決まる
2027年4月から、家庭用エアコンの新しい省エネ基準が始まります。
これにより、これまでのような「とにかく安いエアコン」を選びにくくなるのではないか、という声も出てきています。
もちろん、省エネ性能の高いエアコンが普及すること自体は良いことです。
少ない電力で効率よく冷暖房できる機器が増えれば、暮らしの光熱費も環境負荷も抑えやすくなります。
ただし、住宅会社の立場から見ると、この話は単に「エアコンをいつ買うか」という家電の問題だけではありません。
これからの家づくりでは、
どんなエアコンを選ぶかよりも前に、
どんな断熱性能の家にするか、
そして
その家の中で空気をどう動かすか
まで考えることが、ますます重要になっていきます。
資源エネルギー庁も、2027年4月からエアコンの新しい省エネ基準が始まることを案内しており、トップランナー制度の中で家庭用エアコンの省エネ性能向上が求められています。
断熱性能は高ければ高いほど良い、とは限らない
高気密・高断熱の住宅にすると、冬の暖房費は大きく下がります。
外の寒さが室内に伝わりにくく、室内の暖かさも逃げにくくなるため、少ないエネルギーで家の中を暖めることができます。
これは高性能住宅の大きなメリットです。
しかし、ここで注意したいのが夏です。
断熱性能を高めるということは、冬の暖かさを逃がさないだけでなく、夏に室内へ入った熱も逃げにくくなるということです。
窓からの日射、家電や照明、人の体から出る熱、調理時の熱などが室内にこもると、ある断熱レベルを超えたところから、夏の冷房負荷が増えていく傾向にあります。
つまり、家づくりでは単純に
断熱を厚くすればするほど正解
という話ではありません。
大切なのは、
冬の暖房費と夏の冷房費、
その年間合計が最も低くなる断熱仕様を見極めることです。
さらに、断熱性能を上げるには、当然ながら施工コストもかかります。
断熱材を増やす、窓の性能を上げる、気密施工の精度を高める。
どれも快適性や省エネ性に直結しますが、初期費用とのバランスも無視できません。
これからの住宅に必要なのは、
「最高性能を目指す」ことだけではなく、「建築費と光熱費のバランスが取れた性能」を設計すること
だと考えています。
夏の難しさは「温度」よりも「湿度」にある
冬の暖房は、比較的わかりやすい面があります。
外が寒い。
室内を暖める。
暖めた空気を逃がさない。
そのために断熱と気密を高める。
一方で、夏の冷房はもう少し複雑です。
夏の外気は、温度が高いだけでなく、湿度も高いからです。
家の中では、換気のために外気を取り入れなければなりません。
しかし、その外気には多くの湿気が含まれています。
高気密・高断熱住宅では、外気が勝手に大量に入ってくることは抑えられますが、計画換気によって必要な空気は必ず導入されます。
その湿気をどう処理するか。
ここで重要になるのが、エアコンの冷房運転です。
エアコンは室温を下げるだけでなく、空気中の水分を取り除く除湿の役割も担っています。
ところが、冷房能力が大きすぎるエアコンを選ぶと、室温がすぐに設定温度へ到達してしまいます。
すると、エアコンは冷房運転を弱めたり、送風状態に近くなったりします。
その結果、室温は下がっているのに湿度が下がらない、という状態が起こります。
いわゆる、
温度は低いのに、なんとなくジメジメする
という状態です。
夏の快適性は、温度だけでは決まりません。
むしろ、高性能住宅ほど湿度コントロールが重要になります。
そのためには、エアコンを強く動かすよりも、
室温を下げすぎず、除湿も続けられるように、
ゆるやかに連続運転することが大切になります。
ここで難しいのが、日射熱との関係です。
一般的には、夏の日射はできるだけ遮るべきものです。
これは基本として間違いありません。
しかし、室内の熱負荷があまりに小さすぎると、エアコンがすぐに止まり、除湿が進みにくくなることがあります。
つまり、冷房運転を安定して続けるためには、ある程度の熱負荷が必要になる場面もあります。
夏の設計は、
「日射を遮れば終わり」
「エアコンを大きくすれば安心」
ではありません。
日射遮蔽、断熱性能、換気量、内部発熱、エアコン能力、運転方法。
これらを総合的に考える必要があります。
PHPPで見えてくる、夏の冷房計画
こうした温熱環境を考えるうえで、世界的に使われている計算ツールの一つに、ドイツのパッシブハウス研究所が開発した PHPP があります。
PHPPは、Passive House Planning Packageの略で、建物のエネルギー収支を計算するためのツールです。
Passive House Japanの説明によると、PHPPは1997年にドイツのパッシブハウス研究所によってリリースされた、Excelベースのエネルギー収支計算ツールで、冷暖房・換気・給湯・照明・補助電力などを含めて、設計段階で建物のエネルギー消費を予測するために開発されたものです。
PHPPの特徴は、単に断熱性能だけを見るのではなく、建設地の気象条件、外皮性能、窓からの日射取得、換気、冷暖房負荷などを総合的に検討できることです。
パッシブハウス研究所の公式サイトでも、PHPPはパッシブハウス設計に用いられる計画ツールとして位置づけられています。

日本の住宅では、どうしても冬の暖房負荷に注目が集まりやすい傾向があります。
しかし、温暖地である静岡では、夏の冷房計画も非常に重要です。
特に近年は、猛暑日が増え、夜間も外気温が下がりにくくなっています。
さらに湿度も高いため、冷房と除湿の計画をきちんと考えなければ、断熱性能の高い家であっても快適とは言い切れません。
PHPPのようなエネルギー収支計算を用いることで、
- どのくらいの断熱性能が必要か
- 窓からどれくらい日射が入る
- 夏の冷房負荷はどの程度か
- 過剰な断熱や過剰な設備になっていないか
を、より緻密に検討することができます。
これからの家づくりでは、経験や感覚だけでなく、こうした計算によって、冬と夏の両方を見据えた性能設計を行うことが大切になります。
エアコンが高くなるなら、「台数を減らす」という考え方もある
エアコンの省エネ性能が上がれば、機器本体の価格も上がる可能性があります。
これまでのように、各部屋に安価なエアコンを1台ずつ設置する考え方は、今後少しずつ見直されていくかもしれません。
そこで重要になるのが、
少ない台数のエアコンで、家全体を冷暖房する
という考え方です。
高気密・高断熱の住宅であれば、各部屋に大きな温度差が生まれにくくなります。
その特性を活かせば、1台または少ない台数のエアコンで、家全体をゆるやかに冷暖房することが可能になります。
もちろん、ただエアコンを1台設置すればよいわけではありません。
冬は暖かい空気をどのように家全体へ広げるか。
夏は冷たい空気をどのように各室へ届けるか。
そして、冷やした空気・暖めた空気が一方通行にならず、きちんとエアコンへ戻ってくるか。
ここが非常に重要です。
サンキハウスでは、冬は床下エアコンによる暖房、夏は小屋裏エアコン、または2階ホールエアコンによる冷房を考えています。

冬は、床下空間に暖気を送り、床下から家全体をじんわり暖めます。
床面が冷えにくくなることで、足元の寒さを抑え、家全体をやわらかく暖めることができます。
夏は、小屋裏や2階ホール付近から冷気を送り、冷たい空気が自然に下へ降りる性質を活かして、家全体へ広げていきます。
このとき大切なのが、リターンエアです。
全館空調のキーポイントは「リターンエア」
全館空調というと、多くの方は「冷たい空気をどう送るか」「暖かい空気をどう送るか」に注目します。
もちろん、送り出す空気の経路は大切です。
しかし、それと同じくらい重要なのが、
家の中の空気をどうエアコンに戻すか
です。
エアコンは、空気を吸い込み、その空気を冷やしたり暖めたりして、再び室内へ吹き出します。
つまり、エアコンの前にきちんと空気が戻ってこなければ、効率よく冷暖房することはできません。
特に小屋裏エアコン冷房では、配置が重要になります。
理想的には、家の中で暖まった空気をエアコンの背後から吸い込み、エアコンの前方に設けたチャンバー室、つまり小屋裏空間へ冷気を吐き出す構造にします。
そして、その冷気を吹抜けや階段、各室への経路を通して家全体へ届けていきます。
このとき、吹き出した冷気がすぐにエアコンへ戻ってしまうと、家全体は冷えません。
逆に、家の中をめぐって暖まった空気がきちんとエアコンへ戻るように計画されていれば、冷房効率は高まります。
つまり、小屋裏エアコン冷房では、
冷気をどこから出すか
暖まった空気をどこから戻すか
その空気の流れがショートカットしないか
を設計段階で考えておく必要があります。
これは、後からエアコンだけを交換しても解決できない部分です。
間取り、吹抜け、階段、建具の位置、空気の通り道、小屋裏の構造。
こうした建築側の計画と、エアコンという設備計画が一体になって、初めて全館空調はきちんと機能します。
これからは「高性能なエアコン」より「エアコンが活きる家」
2027年以降、エアコンの省エネ性能はさらに重視されていきます。
省エネ基準の引き上げによって、機器そのものの性能は上がっていくでしょう。
しかし、どれだけ性能の良いエアコンを選んでも、家の断熱性能や空気の流れが整っていなければ、その能力を十分に活かすことはできません。
逆に、建物の性能と空調計画が整っていれば、少ない台数のエアコンでも、家全体を快適に保ちやすくなります。
これからの家づくりで大切なのは、
「どのエアコンを買うか」だけではありません。
その前に、
- エアコンが効きやすい家にすること
- 冷暖房した空気が家全体に届く設計にすること
- 湿度まで含めて快適に暮らせる計画にすること
ここまで考えることで、エアコンの価格上昇も、単なる負担ではなくなります。
各部屋に何台もエアコンを付けるのではなく、
少ない台数で家全体を冷暖房できるなら、
機器のコストアップはある程度吸収できます。
そして何より、家の中の温度差が少なく、夏も冬も快適に暮らせることは、毎日の生活の質に直結します。
まとめ|これからの家づくりは、断熱と空調をセットで考える時代へ
「安いエアコンが消える」という話は、一見すると家電価格の問題に見えます。
しかし、住宅の視点で見ると、それはこれからの家づくりの方向性を考えるきっかけでもあります。
断熱性能を高めれば、冬の暖房費は下がります。
しかし、夏の冷房負荷や湿度コントロールまで考えなければ、本当に快適な家にはなりません。
大切なのは、断熱性能、日射、換気、湿度、エアコン能力、空気の流れを総合的に設計することです。
そして、これからの住宅では、
高性能なエアコンを選ぶこと以上に、エアコンがきちんと機能する家をつくること
が重要になります。
冬は床下エアコンで足元から暖める。
夏は小屋裏エアコンや2階ホールエアコンで、冷気を上から家全体へ届ける。
そのために、リターンエアまで含めて空気の流れを設計する。
これが、これからの省エネ時代に必要な空調計画です。
エアコンが変わる時代だからこそ、家づくりも変わる必要があります。
サンキハウスでは、断熱性能だけでなく、冷暖房の仕組みまで含めて、静岡の気候に合った快適な住まいを考えていきます。
今回お話しした空調計画を取り入れたモデルハウスをご覧いただけます。
小屋裏エアコンの心地よさも実際に体感できますので、ぜひお気軽にご見学ください。
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