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その窓、本当に必要?暮らしを快適にする“窓の考え方”

「光がたくさん入る家にしたい」
家づくりの打ち合わせで、そんな言葉をよく耳にします。
大きな窓、たくさんの窓――それは確かに明るく開放的な印象を与えます。
けれど、窓は「心地よさ」を生む一方で、家の弱点にもなるのです。

今日は、窓の役割と、その裏にあるデメリットを少し丁寧に見つめ直してみましょう。
本当に必要な窓を選ぶことで、家も暮らしもぐっと整っていきます。

窓のデメリット ― 光の裏にある5つの影

① 断熱性の低下

窓は、外と中をつなぐ開口部。
光を迎え入れる代わりに、熱も出入りしてしまう場所です。
冬の朝、カーテンを開けたときにひんやりとした空気が流れ込むあの感覚。
それは、壁よりも窓がずっと熱を通しやすいから。
窓が少し減るだけで、部屋の温度は穏やかに整い、エアコンも静かに働き始めます。

② 耐震性の低下

地震に耐えるのは「壁」です。
窓を多く設けるほど、建物の外殻は弱くなります。
外の光を欲張りすぎると、見えないところで家の強さを削ってしまう
だからこそ、必要な場所にだけ、しっかりと窓を設けてあげることが大切です。

③ メンテナンスの手間

窓のまわりに打たれたシーリング材は、10〜20年ほどで劣化します。
太陽や雨に晒されながら、少しずつ硬く、割れやすくなっていく。
小さなヒビから雨が入り、やがて雨漏りへとつながることもあります。
年月を重ねても安心して暮らせるように、窓は少なく、丁寧にが基本です。

④ 収納と家具の居場所を奪う

窓が増えると、壁が減ります。
壁が減ると、収納や家具を置ける場所も減っていきます。
「この壁に棚をつけたかったのに」と思ったとき、そこに窓がある。
そんな小さな後悔を減らすためにも、窓と壁のバランスを意識したいですね。

⑤ コストが上がる

高性能な窓ほど価格も上がります。
けれど、数を減らして質を上げれば、心地よさと省エネは両立できます。
たくさんの窓よりも、少しの「上質な窓」が家を豊かにしてくれるのです。

窓の5つの役割を見つめ直す

窓の役割は、5つあります。

光を取り入れる
景色を取り込む
出入りをする
風を通す
そして、熱をコントロールする

この5つを意識してみると、暮らしに必要な窓の数や形が自然と見えてきます。

光を取り入れる

光があふれる家も素敵ですが、やわらかな光のほうが、心は落ち着きます。
小さな窓から差し込む光と影がつくる陰影は、日本の家らしい美しさでもあります。

景色を取り込む

窓の先に、どんな景色が広がるか――それが心地よさを決めます。
もしお隣の壁しか見えないなら、その窓は本当に必要でしょうか。
ほんの少しセットバックして植栽を添えるだけで、小さな自然が暮らしの中に生まれることもあります。

出入りをする

出入りがない場所に、大きな掃き出し窓はいりません。
窓は外と人との関係をデザインするもの。
腰窓や小窓のように、心地よい距離感を生む窓もあります。

風を通す

今の家は機械換気が整っていて、窓を開けなくても空気は循環します。
それでも春や秋の心地よい季節、風を感じたいと思う時には、風の通り道を計算して小さな窓を開ける。
それだけで、暮らしの空気がふっと軽くなります。

熱をコントロールする

かつて断熱性・気密性が低かった時代の家では、
冬の暖かい日差しを取り入れるために、南側に大きな窓を設けることが常識でした。
しかし今の家は性能が高く、気密・断熱性も格段に向上しています。
そのため、昔のように南面に大きな窓を設けると、夏には強い日差しが室内に入り込み、家全体が高温になるという逆効果も。

現代の住宅では、庇(ひさし)やルーバー、外付けブラインドなどを組み合わせて、
「光を採りながら熱を遮る」設計が求められます。
性能が上がった今だからこそ、窓は“光”だけでなく“熱”をどう扱うかが大切なテーマなのです。

窓は「外」と「内」をつなぐ心の境界

窓は単なる開口部ではなく、人と外の世界をつなぐ場所です。
景色や光、季節の移ろい――それらをどのくらい自分の暮らしに招き入れるか。
その加減こそが、家の居心地を決めます。

「明るい家にしたい」と思ったとき、
まずは「どんな光を、どんな景色を迎えたいのか」から考えてみてください。
数を減らした分、性能の高い窓を選び、丁寧に配置する。
それが、心も家も長く快適に保つ窓づくりの第一歩です。

投稿者プロフィール

伊豆川達也
伊豆川達也宅地建物取引士