リノベで2重屋根工法①
大阪万博が始まりましたね。話題の大屋根リング(隈研吾氏設計)は、半年後には解体される予定とのこと。あれほどの大量の木材が、解体後どうなるのか気になるところです。
隈研吾さんは、木材を大胆に外部に使った建築で知られ、多くの注目を集めてきました。ただ一方で、近年は各地の作品で木の劣化が進み、補修に多額の費用がかかっていることも話題になっています。
私たちのように木造建築に日々携わっている者にとって、無処理の木材を外部にそのまま使うことには大きなリスクがあると感じています。一般的な木材であれば、屋外にさらされると10年もしないうちに劣化が始まってしまいます。
たとえばウッドデッキに使用されるアイアンウッド(イペなど)のような非常に硬く耐久性のある木材であっても、15年ほどで傷みが目立つようになります。
屋根こそ、住宅で最も過酷な環境にさらされる場所
住宅の中で、最も厳しい環境にさらされているのが「屋根」です。雨や日射に常時さらされ、温度や湿度の変化も大きく、屋根材には高い耐久性が求められます。
そのため屋根材選びはもちろん重要ですが、実はその下にある「防水下地材」の性能こそ、構造材(木材)を守る鍵なのです。以前のブログでもご紹介しましたが、当社ではタジマ社のニューライナールーフという高性能な防水下地材(アスファルトルーフィング)を採用しています。やや高価ではありますが、それに見合う信頼性があります。
築33年の屋根をリノベーションして見えてきたもの
今回、築33年を迎える木造住宅にて、「二重屋根工法」を用いたリノベーションを実施する機会がありました。
実際に既存の屋根を解体することで、30年以上経過したアスファルトルーフィングがどのような状態であるのか、現場で直接確認することができました。
この工事の様子を、2回にわたってご紹介していきます。
このお宅では、33年の間とくに問題はありませんでした。しかし最近になって屋根材の劣化が目立ち始めたこと、そして使用されている屋根材がアスベスト含有製品であったことから、屋根の葺き替えを決断されました。
約30年前は、アスベストを含んだスレート系の屋根材が「カラーベスト」という商品名で広く普及しており、多くの住宅で使われていた時代です。
アスベスト含有の屋根材を改修する方法には大きく2つの選択肢があります。
・既存の屋根材をすべて撤去して新たに葺き直す方法
・既存の屋根の上から新しい屋根をかぶせて封じ込める「カバー工法」
今回は後者のカバー工法ではなく、将来的な負担を残さないことを優先し、屋根材を撤去してから新たに葺き替える方法を採用しました。
アスベスト屋根材の撤去は慎重に
アスベストを含む屋根材を解体する際には、本来であれば屋根材を極力破壊せずに撤去することが望ましいとされています。
しかし今回の現場では、基材自体が経年劣化しているうえに、屋根下地にしっかりと張り付いた状態だったため、どうしても「剥がし取る」ような作業にならざるを得ませんでした。
廃材は専用の処理バッグに、手作業で少しずつ収めて地上へ降ろします。手間と時間のかかる作業でしたが、安全と法令遵守のためには避けて通れません。
その分、作業全体の時間は通常より大きくかかってしまいました。
劣化が進んでいた防水紙とその原因
撤去後、下地のアスファルトルーフィングを確認すると、ところどころに穴が開いている箇所が見受けられました。
特に、屋根材が重なり合う部分の真下では、長年の摩擦による擦れが顕著です。
屋根材は気温変化によってわずかに伸縮を繰り返します。
そうした動きが30年以上続いたことで、防水紙との間に摩耗が生じていたと考えられます。
実際に間近で見ると、このような状態でした。
露出する合板と劣化の実態
さらに詳しく観察すると、下地の合板が露出している箇所もところどころ見られました。
築30年以上の住宅では、多かれ少なかれこのような劣化が進んでいる可能性があると言えます。
今回の現場では、幸いにも下地の構造用合板に大きな傷みは見られませんでした。
ぎりぎりのタイミングで補修できたのではないかと思われます。
30年以上住み続ける時代の屋根メンテナンス
これまでの日本の住宅は、概ね30年を目安に建て替えるケースが一般的でした。
しかし、今後のように30年を超えて住み続ける場合には、屋根の下地材――特にアスファルトルーフィングの耐久性が重要になってきます。☘️
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