スタッフブログ
staff blog
小屋裏エアコンの課題と設計上の注意点 — 導入前に知っておきたい重要な視点
地方の実力のある工務店を中心に、小屋裏エアコン冷房(※密閉型)が普及し始めてきました。今回は全国の設計事務所や工務店が発信する事例を基に、小屋裏(屋根裏)エアコン方式に潜む失敗例や注意すべきポイントをまとめました。
※密閉型とは、小屋裏部屋など独立した空間に壁掛エアコンを設置し、ファン+ダクトあるいは、ガラリからの自然落下による全館冷房を言います。
密閉型でない(開放型)は、例えば2階のホールの高所に壁掛エアコンを設置して全館冷房を試みる「ホールエアコン」などがあります。
① 屋根断熱と日射遮蔽が要になる性能設計
- 屋根断熱が不十分だと、冷房効率が極端に下がり、エアコン1台で全館空調を目指す設計では致命的です(屋根断熱は厚さ20cm以上推奨)
- また、南面からの日射遮蔽が甘い住宅では、小屋裏エアコンの冷却力を大きく削ぎます。庇やシェードなどの設計対策が不可欠です
② 気流×構造設計が鍵:冷気の降下ルート設計
リターン開口(吸気口)設計が甘いと風量不足となり、温度調整や除湿機能の維持も困難になります
冷たい空気が2階→1階へ自然に降りる導線設計が欠如していると、1階への冷気供給が不十分になります。階段位置や吹抜け配置が効果的な導管になります
③ 狭い小屋裏では「密閉型」のリスクが高まる
- 小屋裏空間が狭く密閉されていると、冷気が戻り冷房効果が打ち消されてしまう“サーモオフ”という現象が起きやすく、稼働停止→再稼動を繰り返す悪循環に
- 開放型小屋裏(大きな開口がある設計)の方が空気循環しやすく、成功確率が高いとされています
④ 結露・カビのリスクと防湿設計の重要性
- 冷気を含む空気がダクト内部や小屋裏に滞ると結露を引き起こし、カビ・構造劣化の原因となります
- 可変調湿型の防湿シートや透湿抵抗のある素材を使う断熱施工が結露リスク軽減には有効です
タイベックスマートは空気は通さず、水蒸気のみを高い方から低い方に透過させる機能のあるメンブレン(膜)です。
登山やスキー服のゴアテックスの様な働きをします。
⑤ 実装にも設計にも高度な技術が必要
- 小屋裏設計が未熟だと、冷気が寝室に届かない、メンテナンス不能、センサー誤作動などが発生します
- 現場設計・施工の丁寧さが、そのまま性能の良し悪しに直結。経験豊富な設計者・業者と知識共有しながら進めることが望ましいと言えます
注意点と設計チェックリスト
チェック項目 | 検討ポイント |
---|---|
屋根断熱の厚み | 少なくとも≥20cm(素材によって調整) |
断熱性能値 | 断熱等性能等級6以上( UA値 ≤ 0.46) |
気密性能値 | C値 ≤ 0.8(0.5以下推奨) |
日射遮蔽の対応 | 窓位置・庇設計、シェード設置など |
冷気導線の確保 | 階段・吹抜け・補助ファンなど複数ルート |
リターン開口設計 | 吸気バランス確保、風量低下防止 |
小屋裏の開放性/容積 | 密閉型避け、小さすぎる容積は回避 |
結露対策 | 防湿シート、調湿素材、シミュレーション |
メンテナンス性 | 点検口、照明、床板設置など事前計画 |
まとめ
小屋裏エアコンは、省エネ性と設備コストの低減という観点で有効な方式ですが、設計段階で断熱・気流・日射・結露・施工性を十分に配慮しないと、性能が出ないどころか、建物を傷めてしまいます。
導入を検討する際は、信頼のおける設計者や経験豊富な工務店と連携し、初期設計を丁寧に進めることが成功の鍵です。
最近の施工事例
投稿者プロフィール

- 宅地建物取引士
最新の投稿
家のしくみ2025年8月16日ハウスメーカーで建てる前に知りたい 型式適合認定とリノベーションの壁
家のしくみ2025年8月10日静岡で中古住宅リノベーションが進みにくい理由
つぶやき2025年8月7日「現場発泡ウレタン断熱ってどうなの?」プロが語るメリットと注意点
つぶやき2025年8月3日小屋裏エアコンの課題と設計上の注意点 — 導入前に知っておきたい重要な視点