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床下エアコン暖房と床暖房はどう違う ~メリット・デメリットを徹底比較~

「床下エアコン」と「床暖房」はどちらも“足元から暖かい”快適な暖房方式ですが、仕組みやコスト、設計条件が大きく異なります。
以下に構造・快適性・コスト・メンテナンス・設計自由度などの観点から、メリット・デメリットを整理しました。

床下エアコン
床暖房

1. 仕組みの違い

項目床下エアコン床暖房
暖房原理床下空間に設置した家庭用エアコンで空気を暖め、床下の温かい空気を床のスリットや隙間から室内に上昇させる「対流式」暖房床に温水パイプや電熱線を埋設し、床そのものを温めて輻射熱で室内を暖める「輻射式」暖房
必要設備通常のエアコン1台+床下通気計画(断熱・気密が重要)専用の温水ボイラー or 電気ヒーター+パイピング or パネル+制御機器

床下エアコンは普通のエアコン1台を床に埋め込むだけなので、設備費用としては安価です。ただし、基礎断熱が条件ですので、元々基礎断熱が標準の住宅会社なら、大変リーズナブルに全館暖房が可能です。

2. 快適性の比較

観点床下エアコン床暖房
体感温度空気の循環で床面~天井まで比較的均一。床温度は25℃前後床面は33~35℃とやや高く、足裏からの輻射で直接暖かい
立ち上がり比較的速い(数十分)やや遅い(1~2時間)
温度ムラ設計・気密次第で少なく、家全体を均一にできる設置エリア以外は暖まりにくい(廊下・トイレなど)
乾燥感空気を動かすため多少乾燥しやすいが、低温運転なら穏やか輻射熱中心で乾燥感が少ない

床下エアコンの場合、床の温度が室温+2℃程度なので、床材も普通の無垢フローリングが使えます。床暖房の場合は専用のフローリングが必須です。

3. コスト・メンテナンス

項目床下エアコン床暖房
初期コスト比較的安い(エアコン+ダクト施工)=約30〜60万円前後高め(温水式:80〜150万円、電気式:60〜120万円)
運転コスト高断熱・高気密なら低コスト(省エネ)熱容量が大きいため安定だが、長時間運転が前提で電気代はやや高め
メンテナンス家庭用エアコンと同様(掃除・交換容易)埋設パイプは交換困難。メンテナンス性は低い
故障時対応エアコン交換で済む床下の配管・パネル交換は大工事になることも

床下エアコンは普通のエアコンを使うため、初期コストが安価。また、メンテナンスや交換も普通の壁かけエアコンと変わらないので容易。

4. 設計・構造上の条件

観点床下エアコン床暖房
断熱・気密の重要度非常に高い(基礎断熱・C値0.5以下推奨)通常の断熱でも可だが、高性能住宅ではより効率的
基礎形状の制約基礎断熱・気密施工が必須。床下高さ・空気経路設計が重要特に制約は少ない
間取りの自由度スリット・通気経路を考慮した設計が必要床下配管の配置にやや制約
冷房兼用小屋裏エアコンと組み合わせれば「全館空調」に転用可冷房不可(暖房専用)

床下エアコン1台で家全体を暖める全館暖房をするなら、断熱等級6以上の断熱仕様と気密性能C値は0.5c㎡/㎡以下が望ましい。温風を隈なく届けるため、床下の基礎立上りの位置を考慮した設計が必要です。

5.向いている住宅タイプ

条件床下エアコン床暖房
高気密・高断熱住宅(UA値0.34、C値0.3以下)+基礎断熱   ◯
効率が良く、家全体を暖房
   △
部屋の空気が届く範囲のみ
標準的な断熱住宅(UA値0.6程度)   ×   ◯
局所的な快適性重視
家全体を暖めたい(全館暖房)   ◯
床下エアコン一台で可能
   △
全ての床に敷き詰めれば可能
部分的に使いたい(LDKのみなど)   ◯
部分的な使用に適する
メンテナンス性・将来交換性を重視   ◯
交換や清掃が容易
冷房もまとめて考えたい   ◯
床下+小屋裏エアコン併用(全館空調)
   △
個別エアコンで対応
標準的な気密性能・低断熱住宅   ×
効かない
   ◯
施工が容易で導入しやすい

床下エアコンを設備する建物は高気密・高断熱と基礎断熱が必須です。(UA値0.34、C値0.3以下を推奨)

6. 総合まとめ

項目床下エアコン床暖房
快適性◎(家全体が暖かい)○(足元中心)
初期コスト◎(安価)△(高め)
ランニングコスト◎(低め)○(安定だが高め)
メンテナンス性◎(容易)△(難しい)
構造要求△(高断熱・高気密前提)○(汎用性あり)
冷暖房統合◎(全館空調と相性良)×(暖房専用)

建物の性能を高くする必要がありますが、設備コスパが良いのが床下エアコンによる全館暖房です。

投稿者プロフィール

伊豆川達也
伊豆川達也宅地建物取引士