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穴の開いたストローでは断熱も換気もできません
~気密のない高断熱住宅が無力な理由と、換気の真実~
「高断熱な家」を建てることは、今や当たり前の基準となりました。しかし、断熱性能(Ua値)の数値ばかりに気を取られ、「気密(C値)」をおろそかにしていませんか?
結論から申し上げます。気密のない高断熱住宅は、ただの「穴の空いた魔法瓶」です。
なぜ気密が伴わないと断熱が無力化してしまうのか。そして、家と人を守る「換気」とどのような関係があるのか。数値的な根拠とともに解説します。
1. 断熱性能を「相殺」する隙間の正体
断熱材を分厚くしても、家に隙間があれば熱は容赦なく逃げていきます。この「漏気熱損失」が、せっかくの断熱性能をどれほど引き下げてしまうか、数値で見てみましょう。
C値が断熱性能に与える影響
住宅の隙間を示す「C値」によって、カタログスペック上の断熱性能が実際にどれくらい有効に働くかをまとめた表がこちらです。
| C値 (相当隙間面積) | 断熱性能の 有効活用率 | 状態の イメージ |
|---|---|---|
| 0.5以下 | 約95%〜 | 魔法瓶のように性能をフル発揮 |
| 1.0 | 約80% | 2割の熱が隙間から逃げている |
| 2.0 | 約60% | 断熱材の4割がムダになっている |
| 5.0 | 約30%以下 | 窓を開けて暖房しているのと大差ない |
解説: C値が2.0(一昔前の基準)程度あると、どれだけ高性能な断熱材を使ってUa値を高めても、実際の保温力は4割もダウンしてしまいます。気密性能は、断熱材という「宝の持ち腐れ」を防ぐための必須条件なのです。
2. 穴の開いたストローでは「換気」ができない
「高気密だと息苦しそう」という誤解がありますが、実はその逆です。気密が高い家ほど、空気は常に新鮮に保たれます。

ここで「ストロー」を想像してみてください。
冷たいジュースを飲もうとしたとき、ストローにいくつも穴が開いていたらどうなるでしょうか?
- 高気密な家(穴のないストロー): 吸った分だけ、コップの底(給気口)から新鮮な空気(ジュース)が入ってきます。
- 低気密な家(穴だらけのストロー): 途中の穴(隙間)から空気ばかり吸い込んでしまい、部屋の隅々にある古い空気(ジュース)を吸い上げることができません。
「給気口」が飾りになってしまう数値
学術的なシミュレーションでは、C値が悪化するほど、本来空気が入るべき「給気口」からの流入率が下がることが証明されています。

- C値 0.5の場合: 給気口から入る空気は全体の約66%
- C値 1.0の場合: 給気口から入る空気は全体の約50%
- C値 2.0の場合: 給気口から入る空気はわずか約35%
- C値 5.0の場合: 給気口から入る空気はわずか約17%以下
つまり、C値が2.0を超えるような家では、壁にある給気口はほぼ機能しておらず、「どこから入ってきたか分からない(壁の中や床下のホコリを含んだ)空気」を吸わされていることになります。
3. 家を内側から破壊する「内部結露」の恐怖
気密がないことの最大の代償は、光熱費ではなく「家の寿命」です。
隙間がある家では、冬場、室内の暖かく湿った空気が壁の内部に侵入します。
- 侵入: 気密が悪いと、水蒸気が断熱材の層に入り込む。
- 結露: 外気に近い冷たい部分で水蒸気が冷やされ、水滴になる(内部結露)。
- 腐敗: 濡れた断熱材は重みで沈下し、隙間が拡大。さらに構造材を腐らせる。
一度内部結露が始まると、壁を剥がさない限り補修は不可能です。「高断熱なのに寒い、しかも家が早く傷む」という最悪の結果を招くのです。
まとめ:Ua値(計算)よりC値(実測)を信じよう
断熱性能(Ua値)は、設計図があれば机の上で計算できます。しかし、気密性能(C値)は、現場の職人さんの丁寧な手仕事と、完成後の実測でしか証明できません。
これから家を建てる方は、ぜひ住宅会社にこう質問してみてください。
「全棟で気密測定を行っていますか? C値の目標値は0.5以下ですか?」
この質問に自信を持って「イエス」と言えない会社であれば、どんなに「高断熱」を謳っていても、その性能は無力である可能性が高いと言わざるを得ません。
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