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ホールエアコンのすすめ:小屋裏エアコンより手軽で全館空調冷房を実現する代替案



夏、家中どこにいても涼しく過ごしたい。たった1台の壁掛けエアコンで全館空調冷房が可能になる「小屋裏エアコン方式」は魅力的ながら、どうしてもコストや構造でハードルが高くなることがあります。そこで注目したいのが、「ホールエアコン方式」です。小屋裏を作らずとも、2階ホールや階段上がり口などを使って、家全体に冷気を回す方法。この方式にもきちんと使える実績とノウハウがあります。
小屋裏エアコンとは、そしてその課題

サンキハウスの聖一色モデルハウスで採用されている「小屋裏エアコン冷房方式」は、冷たい空気が下に落ちる性質を利用した全館空調冷房システムです(冷気=重力で下がる性質を応用)。天井裏や小屋裏は、2階の居室と天井を通じて繋がっており、2階を冷やすエアコンを屋根断熱仕様で設置することで、1階へも冷気が階段・吹抜けを介して落ちてくる構造になっています。
断熱・気密性能が高い家(断熱等級6や7が望ましい)が前提になるのは当然です。この方式の利点は、家の各部屋に比較的均等に冷風が行き渡ること、そして外壁や屋根からの熱侵入を抑えることで冷房効率が良くなることです。ただし、細かな風向き・局所的な温度調整は難しく、小屋裏を造ること自体のコストや施工の手間も無視できません。
ホールエアコン方式とは何か?

ホールエアコン方式は、小屋裏部屋をわざわざ造らずに、2階のホールや階段の上がり口の廊下など共用の場所(居室ではない場所)に壁掛けエアコンを設けて、そこから冷気を家中に行き渡らせる方法です。ポイントは以下の通り:
- エアコンをできるだけ高い位置(2階ホール/廊下の天井近く等)に設置する
- 各居室のドアは「開放可能な状態」にしておくことで、冷気がホールから居室へ流れ込む通り道を確保する
- さらに、階段・吹抜けの構造を活かし、1階へ冷気を落とすルートを設計する
この方式は、私自身の自宅で2007年竣工時にすでに採用しており、実際「ホールエアコン1台で家全体がかなり快適になる」ことを体感しています。

実際の効果と使い勝手
ホールエアコン方式を長年使ってみてわかったこと:
- 各居室との温度差はおおむね 2℃程度。サーキュレーターなど空気を動かす補助を使うとさらに差が小さくなる
- エアコンの位置にもよるが、1階の方が冷房が効きやすい
- オープンな間取り・吹抜け・階段配置がこの方式と非常に相性が良い
- ドアを閉めっぱなしにしてしまうと冷気が行き届かないので、生活スタイルに応じてドア開放が前提の使い方になる
コスト比較と実用性
「小屋裏部屋を造る + 屋根断熱仕様」には、天井の構造補強・断熱材・仕上げ材・通気や施工の難易度上昇などで追加コストが発生します。また小屋裏にアクセスしにくい場所に設置するとメンテナンス性も下がります。
それに対しホールエアコン方式:
- 構造の追加が少ない → 屋根形状変更や屋根断熱アップ等大規模な追加工事が不要
- 設置コストが抑えられる → 壁掛けエアコン1台を高位置に設置するだけで済むことが多い
- メンテナンスがしやすい位置に設置できることが多い
成功させるための設計ポイント
ホールエアコン方式を採用するなら、次の設計要素を押さえておくと失敗が少なくなります:
- 断熱・気密性能を高めること
断熱等級 6〜7、窓の遮熱性能、屋根・外壁の断熱厚さ、気密 C 値が小さいこと。これらが甘いと冷房効率が落ちる。 - 階段・吹抜け・ホールの配置
ホールは家の中心に近い位置に置く/階段が1階と2階をつなぐ通気経路となる形にする/吹抜けがあれば尚良い。 - エアコン能力と機能の選び方
延床面積・外気条件・窓・方位などを考慮して最適な能力を持たせる。余裕がありすぎるのはダメ。風量・風向調整可能なもので、比較的単純な機種が望ましい。お掃除機能はいらない。 - 補助送風・空気の流れの確保
サーキュレーターなどで冷気の循環を補助/居室に通風ガラリや空気の戻る場所(リターン)があれば尚良い。 - 生活スタイルとの調整
ドアをなるべく開けておく/プライベートな部屋が多い場合は部分冷房の補助を用意/時間帯で冷房を強めに使う/就寝前の予冷を習慣化する。
まとめ
ホールエアコン方式は、「小屋裏エアコン方式」のような全館冷房の快適性をかなりの程度引き継ぎながら、コストを抑える現実的な選択肢です。構造的な追加が少なくメンテナンスもしやすいため、「快適さ × コスト効率」を重視する住宅にとって大いに魅力があります。
これから家を建てる・リフォームする皆さんは、設計段階で「ホールエアコン方式」の導入を検討し、断熱・気密・間取りとの整合性をしっかりと設計士や工務店と詰めることを強くおすすめします。
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- 宅地建物取引士
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