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ハウスメーカーで建てる前に知りたい 型式適合認定とリノベーションの壁

ハウスメーカーで家を建てると、工期が短く、手続きもスムーズ──そんな魅力的な印象をお持ちの方は多いでしょう。
その秘密のひとつが「型式適合認定(型式認定)」という制度です。
しかし、この制度には、将来のリフォーム・リノベーションで思わぬ制約が生じる可能性があります。
今回は、制度の背景からメリット・デメリットまで、わかりやすく解説します。

型式適合認定とは何?

「型式適合認定」とは、あらかじめ住宅の構造・仕様・部材などを標準化し、国土交通大臣の認定を受ける制度です。
認定を受けた型式の住宅は、個別の建築確認申請の一部(主に構造部分)を省略できるため、設計や申請の手間を大幅に削減できます。

制度創設の歴史的背景と主旨

型式適合認定制度は、1960年代〜1970年代の高度経済成長期に整備されました。
当時、日本では都市部への人口集中と住宅不足が深刻で、短期間に大量の住宅供給が求められていました。
そこで政府は、ハウスメーカーなどによる「工業化住宅」の普及を促進するため、設計・構造の事前承認制度として型式適合認定を創設。

目的は「住宅供給のスピードアップ」と「品質の均一化」でした。
現在もプレハブ住宅を中心に、多くの大手ハウスメーカーが採用しています。

工務店とハウスメーカーで異なる建築確認の流れ

  • 工務店の場合
    1棟ごとに設計・構造計算・建築確認申請を行います。
     → 設計・構造計算 → 建築確認申請(個別審査) → 着工
  • ハウスメーカーの場合
    型式認定を利用し、全国共通の標準仕様で建築。
     → 設計(型式認定利用)→ 建築確認の一部省略 → 着工

比較表:工務店とハウスメーカーの違い

項目工務店ハウスメーカー(型式認定)
建築確認1棟ごとに申請型式認定で一部省略
工期比較的長い(外部審査あり)短い(効率的)
設計自由度高い低い(標準仕様が中心)
構造情報の公開建築主に残る原則非公開
大規模改修他社でも可能元メーカーのみの対応が多い
コスト競争起きやすい起きにくい

型式適合認定のメリット

  1. 申請・審査の簡略化
    認定済みの仕様で詳細な構造審査が不要。
  2. 全国規模の大量生産が可能
    均一な品質を保ちつつコストを抑える。
  3. 着工までの期間短縮
    設計から工事開始までが早い。

デメリット:リフォーム・改修の制限

  1. 設計情報が非公開
    構造計算書や詳細図面はハウスメーカーのみが保有し、外部には提供されないことが多い。
  2. 大規模改修が困難
    他社や工務店では構造の把握ができず、耐震改修や間取り変更ができないケースがある。
  3. 元のメーカーに依存
    改修可能なのが事実上そのメーカーだけとなり、費用競争が起こらない。
  4. 増改築のハードル高い
    認定外の変更をすると、新たに構造計算や申請が必要になり、コストや手間が増える。
  5. 改修を否定
    間取り変更を希望したが、メーカーから「構造保証外になるため建て替えを推奨」と言われたケースも。

工務店との違いが将来に効いてくる

工務店は1棟ごとに構造設計・確認申請を行うため、設計図や構造情報が建築主にも残ります。
そのため、将来の大規模リフォームや耐震改修も、他の施工会社で対応できる可能性が高くなります。

まとめ:建てる前に将来も考えて選ぶ

型式適合認定は、住宅の大量供給を可能にし、品質を均一化するために生まれた制度です。
しかし、将来のリフォーム自由度を狭める側面もあります。

新築時には目の前の工期やコストだけでなく、30年後・50年後の暮らし方の変化に対応できるかという視点で、工務店とハウスメーカーの特徴を比較することが大切です。

投稿者プロフィール

伊豆川達也
伊豆川達也宅地建物取引士