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日本の平屋ブームはつづく?

私の子供のころの家は平屋でした。

でも、友達の家は2階建てで、その友達の部屋に上がるために階段を上りました。
自分の家には階段がなく、羨ましかった思い出があります。

いま平屋が選ばれるのは、流行ではなく時代の変化かもしれない

ここ数年、住宅業界では「平屋」が明らかに存在感を増しています。
かつてはシニア向け、あるいは昔ながらの住まいという印象もありましたが、今は若い世代からも支持を集める住まい方になりました。

実際、各社が国土交通省の建築着工統計をもとに集計したデータでは、2024年の平屋着工棟数は61,338棟で、2023年の57,848棟を上回っています。2014年の32,827棟と比べると、この10年でほぼ2倍です。新築住宅に占める平屋の比率も、2010年の6.19%から2020年には11.2%、2023年には15.2%まで上がったとされています。

この数字を見ると、平屋人気は一時的な話題ではなく、日本の暮らし方そのものの変化を映しているように思えます。

なぜ今、平屋なのか

平屋が増えている理由のひとつは、世帯のかたちが変わったことです。
2023年の国民生活基礎調査では、単独世帯が全世帯の34.0%で最も多く、次いで「夫婦と未婚の子のみの世帯」が24.8%、「夫婦のみの世帯」が24.6%でした。2020年国勢調査でも、1世帯当たり人員は2.27人まで減っています。大家族を前提にした大きな家よりも、少人数で暮らしやすい住まいが求められるのは自然な流れです。

もうひとつは、老後を見据えた家づくりが当たり前になってきたことです。
子どもが独立したあとの夫婦二人の時間は、想像以上に長くなります。そう考えると、階段のない平屋を最初から「終の棲家」として選ぶのは、とても合理的です。平屋人気は、単なる見た目の流行ではなく、人生設計の考え方の変化ともつながっています。

さらに、コロナ禍を経て働き方や暮らし方が変わったことも大きいでしょう。
毎日都心へ通う前提が薄れ、郊外や地方でゆとりある土地に住む選択が現実味を帯びました。平屋は広い敷地と相性が良く、庭や中庭、ウッドデッキまで含めて暮らしを設計しやすい住まいです。以前なら“贅沢”だった暮らし方が、今は“ちょうどいい”と感じられるようになってきました。

加えて、平屋は若い世代にとっても「おしゃれな家」になりました。
勾配天井、中庭、大開口、軒の深い外観。SNSやYouTubeで平屋の施工事例が広く共有されるようになり、昔の平屋のイメージは大きく変わっています。今の平屋は、老後のためだけでなく、子育て世帯にとっても魅力的な選択肢になっています。

平屋は、高性能住宅とも相性がいい

住宅会社の立場から見ると、平屋ブームはデザインや暮らし方だけで説明しきれません。
大きいのは、平屋が性能住宅ととても相性が良いことです。

上下階がない平屋は、2階建てに比べて温度ムラが出にくく、冷暖房計画を組み立てやすい特徴があります。空気の流れも整理しやすく、高断熱・高気密と組み合わせることで、少ないエネルギーで快適な住環境をつくりやすくなります。こうした背景から、「平屋×高性能住宅」は今の時代に非常に理にかなった組み合わせとして受け止められています。

ワンフロアで生活が完結する平屋は、動線の良さが注目されがちですが、本当の魅力はそれだけではありません。
温熱環境、換気、空調、メンテナンス性まで含めて考えたとき、平屋は“暮らしやすい形”であると同時に、“性能を活かしやすい形”でもあるのです。

ただし、平屋には課題もある

もちろん、平屋には注意点もあります。
まずよく言われるのがコストです。平屋は同じ延床面積の2階建てに比べて、基礎と屋根の面積が大きくなるため、坪単価は高くなりやすいとされています。LIFULL HOME’Sでも、同じ延床面積で比べると平屋のほうが割高になる傾向があると説明しています。

また、水害リスクにも目を向ける必要があります。
平屋はワンフロアで暮らしやすい反面、浸水時には建物全体が影響を受けやすく、2階への垂直避難もできません。だからこそ、土地選びの段階でハザードマップを確認し、必要に応じて基礎を高くするなどの対策がより重要になります。

さらに、平屋は道路や隣地からの視線と高さが近いため、プライバシーや防犯への配慮も欠かせません。窓の位置、玄関の向き、外構のつくり方まで含めて計画しないと、開放感と暮らしやすさが両立しにくくなることがあります。

このブームはこれからどうなるのか

平屋ブームは、おそらく一過性の流行では終わりません。
なぜなら、その背景にあるのが、高齢化、少人数世帯の増加、働き方の変化、そして性能重視の家づくりという、社会そのものの構造変化だからです。

これから土地価格の問題や建築コストの上昇は続くかもしれません。
それでも、暮らしやすさと将来性を両立できる住まいとして、平屋の魅力はむしろはっきりしていくはずです。特に、広い土地を確保しやすい地域では、平屋は今後も非常に有力な選択肢であり続けるでしょう。

平屋が人気なのは、単におしゃれだからではありません。
少人数で、長く、快適に暮らす。
そして、高性能な住まいを無理なく活かす。
そんな今の時代の価値観に、平屋という住まい方がぴったり重なっているからです。

だからこそ、平屋ブームの本質は「流行」ではなく、これからの暮らし方に合った住まいが、ようやく正当に選ばれ始めたことなのだと思います。

投稿者プロフィール

伊豆川達也
伊豆川達也宅地建物取引士