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床下エアコンの実際

床下エアコンとは、住宅の床下空間に市販の汎用エアコンを設置して、そこに温風を送り込み、その暖かい空気を床下から各居室へ「ガラリ」などの吹出口を経由して室内に取り込む暖房方式のことです。対流・輻射の両面を使い、比較的少ない機器で家の1階全体を(良質な断熱・気密があれば2階まで)暖めることが可能です。

メリット

床下エアコン方式には以下のような利点があります:

メリット内容
足元からの暖かさ(頭寒足熱)床下から暖気を上げるため、床表面・足元が冷えることが少ない。床暖房ほど高温にしなくても体感暖かさが得られる
家の温度ムラの軽減各居室・廊下・洗面所なども含めて温度差が小さくなり、例えばトイレや洗面、玄関など寒さを感じやすい場所でも暖かさが保たれる
コスト・設備のシンプルさ床暖房や全館空調などに比べて設備コストが抑えられることが多い。配管・温水回路が不要、エアコン1台+ダクト・吹出口などで済むことも
床材の制約が少ない床暖房のように熱源パネルを仕込む必要がないため、床材の選択自由度が高くなりやすい。無垢材などを使いたい人には有利

デメリット・注意点

ただし、導入するにあたって以下のような課題・注意点があります:

注意点内容
高断熱・高気密が前提熱が逃げやすい構造だと効果が出にくい。UA値・C値等が良くない住宅ではコストの割に暖かさを感じにくいことがある
基礎断熱が必要床下を外気からある程度遮断する基礎断熱工法が重要。床断熱だけだと外気に近く温風がどんどん失われる
暖まりに時間がかかる床下全体を暖めるため、運転開始後すぐには体感で十分暖かさを感じないことがある。常時運転する・温度変化をゆるやかにするなどの運用が必要
冷房には向かない/湿気・結露リスク夏の冷房用途として使うと、床下に冷風を送ることで結露・湿気が発生しやすくなる。冷房は別系統(屋根裏エアコン等)を併用することが多い
メンテナンス・設置性の問題床下空間に機器・ダクト・吹出口を設置する必要があり、設置場所・配管・メンテナンスアクセスなどを含めた設計が重要。埃・ゴミ・湿気などの影響が出やすい
メーカー保証等の問題エアコンをそのような設置方法で使うことが仕様外となることがあり、保証対象外になる可能性があるので、施工業者と確認が必要

サンキハウスは床下エアコンが標準

サンキハウスでは2014年に床下エアコンを初めて導入し、現在はすべての新築住宅に標準採用しています。床下から暖気を立ち上げ、2階の各居室まで暖房を届けることが可能です。ただし、効率的な空気循環のためには階段に加えて吹き抜け空間を設けることが推奨されます。

エアコン1台で対応できる規模

4kW(14畳用)のエアコンを使用する場合、延床面積40坪程度の2階建て住宅までなら1台で十分に暖房できます。
ただし、建物が細長く一辺10mを超えるようなプランでは、端の部屋まで暖気が届きにくい場合があります。また、二世帯住宅など生活リズムが異なるご家庭では、必要に応じて2台設置するケースもあります。

断熱性能と仕様

床下エアコンの効果を発揮するには**断熱等性能等級5以上(Ua値=0.6以下)**が必要です。
サンキハウスでは、

  • 2×4工法で Ua値=0.52W/(㎡・K)程度
  • 2×6工法で Ua値=0.34W/(㎡・K)程度

と、どちらも基準を十分に満たしています。

仕様としては、

  • 壁:高性能グラスウール140mm厚(2×6工法)
  • 天井・屋根:高性能グラスウール230mm厚(2×6工法)
  • 床下:基礎断熱工法(ポリスチレンフォーム3種b 100mm厚を基礎立上りと土間の一部に施工、2×6工法)

を標準としています。

気密性能

床下エアコンは気密性が確保されていないと十分に機能しません。そのため、外壁・天井・床・基礎など外部に面する部分は徹底的に気密処理を行い、外気の侵入を遮断します。
気密性能は「C値」で数値化され、サンキハウスでは C値=0.2~0.4cm²/m² を実現しています。

機器能力と設置検討

床下エアコンの効果は設置場所や間取りに左右されるため、プラン設計と同時に配置を検討します。機器の能力は住宅規模や断熱性能に応じて計算しますが、40坪前後であれば4kWの機種で十分です。

床下エアコンのコスト

床下はもともと存在する空間のため、新たなスペース確保に費用はかかりません。ただし、施工やメンテナンス性を考慮し、通常より基礎高を10cm上げる必要があり、その分の基礎工事費が発生します。
設置するのは一般的な壁掛けエアコンですが、室外機までの配管距離が長い場合には取付費が増えることがあります。さらに、温度センサーを外出しにして1階壁面に取り付けるため、そのキット費用も追加となります。