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なぜ米国の中古住宅は価値が落ちず、日本の住宅は25年で無価値になるのか?

― 中古住宅の価格差に表れた「家づくりの前提」の違い ―

アメリカでは、
中古住宅が新築時の価格に近い金額で取引されることが珍しくありません。

一方、日本では、築25年ほどで建物の評価はほぼゼロになり、
「土地だけ」の価格になるケースが一般的です。

棒グラフが住宅投資額、折れ線グラフが現存資産額
(空白部分は投資額から資産額を引いた減価額)

同じ「家」なのに、なぜここまで差が生まれるのでしょうか。
その理由は、単純に「日本の家は質が低いから」ではありません。

そこには、
制度・文化・家づくりの思想の大きな違いがあります。

評価しているものが違う

アメリカ:住宅は「資産」

アメリカでは、住宅は
「長く使い、価値を引き継ぐ資産」
として扱われます。

  • 建物自体に市場価値がある
  • 築年数よりも「状態・性能・メンテナンス履歴」を重視
  • 住宅ローンや保険も「住宅の価値」を前提に設計されている

日本:住宅は「消費財」

一方、日本では長らく、

  • 建物は時間とともに価値が下がるもの
  • 最終的に価値が残るのは土地だけ

という考え方が前提になってきました。

👉「どう評価されるか」が、家のつくり方を決めてきたと言えます。

構造と耐久性に対する考え方の違い

アメリカの住宅は、
100年以上使うことを前提に設計されています。

  • 構造体は大きな改修を前提に残す
  • 設備・内装は交換されるもの
  • スケルトン(構造)とインフィル(内装)を分けて考える

だから中古でも、

「この家は、まだ何十年も使える」

という評価が成立します。

一方、日本の住宅は長い間、

  • 30年程度で建て替える前提
  • 設備更新よりも建て替えが選ばれやすい
  • 構造と内装が一体化し、改修しづらい

という流れで発展してきました。

中古住宅市場が「成立しているかどうか」

アメリカでは中古住宅市場が住宅流通の中心です。

  • 新築より中古の取引量が圧倒的に多い
  • 検査(インスペクション)が当たり前
  • 修繕履歴・性能情報が価格に反映される

つまり、
「中古でも安心して買える仕組み」が整っています。

日本では長らく、

  • 新築志向が強い
  • 中古住宅の情報が不透明
  • 不具合リスクを買い手が一方的に負う

結果として、

中古=リスクが高い
→ 価格を下げるしかない

という構造ができてしまいました。

法制度・税制が「価値を下げる設計」になっている

日本では、税務・金融の世界でも、

  • 建物は「減価償却されるもの」
  • 法定耐用年数を過ぎた建物は価値ゼロ扱い

という前提が強く残っています。

これは、

  • 実際に使えるかどうか
  • 性能が高いかどうか

とは、必ずしも一致しません。

👉「まだ十分使える家」でも、制度上は価値がない扱いになる。
これが、日本の中古住宅価格を押し下げてきました。

メンテナンス文化の差

アメリカでは、

  • 定期的な点検・補修は当然
  • メンテナンス履歴は資産価値の一部
  • 修繕=価値を守る行為

という意識があります。

日本では、

  • 壊れてから直す
  • メンテナンスは「出費」
  • 履歴が価格に反映されにくい

結果として、

  • 状態の良し悪しが価格に反映されない
  • なら最初から「築年数で一律評価」

という市場になってしまいました。

では、日本の住宅は本当に「無価値」なのか

答えは、NOです。

無価値なのは、住宅そのものではなく、
価値を正しく評価する仕組みがない」ことです。

近年は、

  • 高耐久な構造
  • 高断熱・高気密
  • 設計性能の見える化
  • 第三者評価(BELS等)

といった取り組みが進み、
長期優良住宅」は確実に増えています。

これからの家づくりに必要な視点

これから家を建てる人にとって大切なのは、

  • 今の価格だけでなく
  • 将来どう評価される家か

という視点です。

  • 構造は長く使えるか
  • 性能は数値で説明できるか
  • メンテナンスしやすいか
  • 普遍的な間取りになっているか

こうした家は、
「25年で無価値」にはなりません。

まとめ

  • アメリカと日本の差は家の質だけではない
  • 制度・市場・文化が価格を決めてきた
  • 日本の住宅が無価値なのではなく、評価の仕組みが未成熟だった
  • これからは「長く価値を保つ家づくり」が現実的な選択になる

家は、建てた瞬間が完成ではありません。
どう使われ、どう引き継がれるかまで含めて、
初めて「価値」が決まります。

ところで、米国の住宅は「2×4工法」という事実

ここで一度、立ち止まって考えたいことがあります。
アメリカやカナダで長く住み継がれている住宅の多くは、2×6を含む枠組壁工法(2×4工法)です。

日本で「2×4工法」と呼ばれている住宅は、もともとアメリカ・カナダの在来工法として発展してきたものです。
約50年前に日本へ導入され、現在では
日本の木造住宅のおよそ2割を占める、決して特殊ではない構造方式になっています。

アメリカの住宅(2×6工法)
日本の2×4住宅

しかも、使われている木材の多くは、アメリカ・カナダと同じ北米産の構造用製材です。
構造形式そのものに、大きな違いがあるわけではありません。

日本の2×4住宅は、むしろ「より厳格」に作られている

注目すべきなのはここです。

日本に2×4工法が導入される際、

  • 使用する木材はJAS規格材であること
  • 釘や金物の品質・種類・ピッチ・本数
  • 構造耐力の考え方

などが、非常に細かく規定されました。

これは言い換えれば、
👉 現地(アメリカ・カナダ)以上に、仕様が標準化・厳格化されている
ということでもあります。

気候条件が激しく、地震もハリケーンもある北米で長く住まわれている構造と、
同じ思想・同じ材料を使い、さらに厳密なルールのもとで建てられている日本の2×4住宅が、
25年で無価値になると考える方が、むしろ不自然ではないでしょうか。

構造に問題があるのではなく、「評価の仕組み」がない

要するに、日本の2×4工法住宅は(アメリカの住宅に比べ)、

  • 構造的に劣っているわけではない
  • 耐久性が低いわけでもない
  • むしろ、丁寧で堅牢な作りになっている

それにもかかわらず、中古市場では
築年数だけで価値を失ってしまう

これは住宅の問題ではなく、
価値を残し、評価する仕組みが日本に十分整っていないことが原因です。

このままでは、非常にもったいない

日本にはすでに、
長く使える性能と構造を備えた2×4住宅が数多く存在しています。

にもかかわらず、

  • 価値が引き継がれず
  • 建替えが前提になり
  • 資源も性能も使い捨てられてしまう

としたら、それは非常にもったいないことです。

これからの日本には、
「きちんと建てられた家が、きちんと評価される仕組み」
が必要です。

2×4工法の住宅は、
その仕組みが整えば、
アメリカ・カナダの住宅と同じように、
時間を超えて価値を保てる可能性を十分に持っている

と、私たちは考えています。

投稿者プロフィール

伊豆川達也
伊豆川達也宅地建物取引士